今回の記事では、将棋の戦法の基本的な考え方を解説していきます。ただ定跡書を暗記するのではなく、そもそも戦法とは何なのか、指し手にどんな意味があるのか考えられるような記事になっています。初心者の方は本格的に将棋の勉強を始める前に、この記事で戦法の基本を知っておくことでこれからの上達速度が一気に早まります。
目次
将棋の戦法って?どんな戦術を指す?
将棋は飛車と角をどう使うかが戦略のカギ
将棋には、飛車と角という2種類の大駒があります。これらの大駒は他の駒と比べて動ける範囲が広く強力です。そのためこれらの大駒をいかにうまく使うかがゲームの勝利のカギとなります。将棋の戦法というのは、この飛車と角をいかに使うかということになるのです。
飛車先を交換する?しない?
まずは飛車の使い方について説明します。飛車の使う方は大きく分けて2つあり、飛車先の歩を交換するか、飛車先の歩を交換しないかとなります。例えば以下の局面を考えてみましょう。
図1-1は序盤から数手すすんだ局面です。ここから飛車をうまく使う手を考えてみます。
図1-2から飛車の前にある歩を前に進めました。このような指し手を「飛車先の歩を突く」といいます。飛車先の歩を突いたところ、相手に取られてしまいましたが、これには狙いがありました。
飛車を前に進めて相手の歩を取り返しました。図1-3ではお互いに歩を1枚持駒にしています。このように飛車先の歩を突いてお互いの歩を取り合う指し手を「飛車先の歩を交換する」といいます。
相手は2三の地点に歩を打って守ります。こちらは大人しく飛車を後ろに引きました。
飛車先の歩の交換には3つの得があるとされています。
- 1歩を手持ちにできる
- 飛車が敵陣に直通する
- 2五の地点に駒を進出できる
将棋の序盤では、飛車先の歩を交換できるかどうかが一つの分岐となります。次に、飛車先の歩を交換できない場合を見てみます。
今度も初手から数手進めた局面を見てみます。今度は先ほどとは違って飛車先の歩を交換できないのがわかりますか?
先ほどと同じように▲2四歩、△同歩と進めても、次に飛車を前に進められないことがわかりますか?もし図1-6から▲2四飛としても、△同角と飛車を取られてしまいます。
将棋の戦法は、飛車先の歩を交換できるかどうかというのは非常に大きなポイントとなります。
飛車先の歩を交換するかどうかで戦法が決まる
角道を開ける?閉じる?
将棋の戦法における角の使い方は、角道を開けるか閉じるかの2つです。以下の図2-1が角道を開けている状態で、図2-2が角道を閉じている状態です。角道が開いていると角が動ける範囲が広くなっているのがわかりますか?
角道が開いているかどうかで戦法が決まる
将棋の戦法は大きく分けて4つ
将棋の戦法は大きく分けて4つあります。飛車先の歩を交換しているかどうか、角道を開けているかどうかの組み合わせで決まります。これらの戦法の種類を以下の表にまとめます。
角道を閉じる | 角道を開ける | |
---|---|---|
飛車先を交換しない | 矢倉戦法 | 角換わり |
飛車先を交換する | 相掛かり | 横歩取り |
一般的に、飛車先を交換する、角道を開けるなど大駒を使いやすくする戦法は、戦いが激しくなり指しこなすのが難しいとされています。矢倉戦法>角換わり>相掛かり>横歩取りの順に戦いが穏やかで初心者にも指しやすくなると言われています。
- 飛車と角の使い方によって、大きく4つの戦法がある
- 矢倉戦法>角換わり>相掛かり>横歩取り の順に戦いが穏やかになり初心者にも指しやすい
飛車も角も大人しく使う、「矢倉戦法」
矢倉戦法は飛車先の交換を防ぎ、角道も閉じている戦法です。お互いにじっくり守りを固める展開になりやすく、初心者にも指しやすいと言われています。一般的には矢倉囲いという囲いを目指していきます。
角をダイナミックに使う、「角換わり」
飛車先の交換を防ぐかわり、角道を開けたまま戦うのが角換わりです。基本的には角を交換して戦っていきます。矢倉戦法に比べて戦いが激しくなる戦法ですが、非常によく現れる形なのでしっかり勉強しておきたい戦法です。
飛車先を交換する、「相掛かり」
お互いに角道を開けないかわり、飛車先の歩を交換するのが相掛かり戦法です。激しい戦いになることが多く、初心者には指しこなすのが難しいとされています。
飛車も角も大暴れ、「横歩取り」
お互いに角道を開けた状態で飛車先の歩を交換し合うのが横歩取りと呼ばれる戦法です。非常に激しい戦いになり、プロの将棋ではよく指されますがアマチュアでは苦手にしている人も多い戦型です。
初心者にオススメの戦法は「矢倉戦法」と「角換わり」
こちらが先手の場合は矢倉戦法に!
矢倉戦法は戦いが穏やかに進む傾向があり、初心者でも指しやすい戦法です。そのためはじめて戦法を勉強する方は矢倉戦法から覚えていくのが良いでしょう。とくにこちらが先手の場合は、「矢倉戦法」の形に誘導しやすいです。
矢倉戦法の基本は、矢倉囲いの形を目指すことです。詳しい指し手は以下の記事を参考にしてみてください。
こちらが後手の場合は相手の出方を見て矢倉戦法or角換わりに
こちらが後手の場合は相手の出方を見ながら「角換わり」と「矢倉戦法」を使い分けるのが良いでしょう。少し指し手を見ていきます。
こちらの図では後手を下にしています。先手の相手がまず▲2六歩としてきたところで△3四歩とするようにしましょう。
先手が飛車先の歩を伸ばして来たら、△3三角として相手の飛車先の歩の交換を防ぐのがポイントです。
先手が角道を開けてきたら、△2二銀とするのが角換わりの形です。ここから相手が角交換してきたら角換わりになります。さらに詳しい指し手は以下の記事を参考にしてみてください。
図4-1から先手がいきなり角道を開けてきた場合を見てみます。矢倉戦法も角換わりも3三の地点に銀をもっていくのが好形とされていますが、ここからどう指せば銀を前に出せるでしょうか?
図4-4からはこちらから角交換してしまいます。これで角換わりの戦型になりました。
図4-5からは銀を前に繰り出して相手の飛車先の交換を防ぎます。
矢倉戦法でも、角換わりでも使える棒銀の攻め!
図5-1は棒銀と呼ばれる攻めの形です。棒銀は矢倉戦法でも角換わりでも使える所ぎの攻めの基本形です。初心者の方はまずは棒銀の攻め筋を勉強するのが良いでしょう。
居飛車と振り飛車って?
今回紹介したのは居飛車戦法
今回紹介した戦法は、どれも飛車を最初の位置から横に動かしませんでした。このように飛車を最初の位置のまま使っていく戦法を「居飛車」といいます。
居飛車?振り飛車?将棋の戦法はまだまだある
居飛車に対して、飛車を横に動かして使う戦法を「振り飛車」といいます。下の図は振り飛車の基本戦法である「四間飛車」を表しています。
まとめ
- 将棋の戦法は大駒の使い方で決まる
- 飛車先を交換するか、角道を開けるかの組み合わせ
- 大きく分けて、矢倉戦法、角換わり、相掛かり、横歩取りの4つの戦法がある
- 初心者は矢倉戦法と角換わりがオススメ
- 居飛車と振り飛車も考えると戦法はさらに多く