矢倉戦法

矢倉戦法vs一直線棒銀

投稿日: 12/30/2018 更新日:

キャラクターイラスト:さゆ吉様

歩美
矢倉囲いを覚えたんですけど、囲いを組もうとすると相手がガンガン攻めてきてそのまま負けちゃうんです…
香介
矢倉囲いは組む手順が長いし、途中にスキもあるからね。相手から攻められた時の受け方を知っておこう!特に棒銀でガシガシ攻められたときに正しく受けるのはなかなか難しいよね。

今回は、矢倉戦法を指したい初心者のために、棒銀の受け方を解説していきます。特に囲わないで棒銀で攻めてくる相手を対処するのは意外と難しいので、しっかり防ぎ方を学んでおきましょう。

なお棒銀を対策したい四間飛車党のかたは以下の記事を参照ください。

矢倉戦法の定跡一覧へ

参考棋書:矢倉の基本 駒組みと考え方

香介
今回の記事は、マイナビ出版の「矢倉の基本 駒組みと考え方」を参考にしたよ!
歩美
それでは私たちと一緒に棒銀対策を学んでいきましょう!

YouTubeの動画で学ぶ、矢倉戦法定跡

ゼロから始める将棋研究所のYouTubeチャンネルでは、動画で矢倉戦法の定跡を学べます。動画の内容は、ブログ記事とほとんど同じものとなっています。

香介
動画で気軽に勉強してもいいし、ブログ記事で読みたいところだけかいつまんでみるのもいいね!


歩美
まずは動画で学習して、ブログ記事で復習するのもおすすめです!

 

矢倉戦法vs急戦棒銀の基本図

後手が玉を囲わずに一直線に棒銀に組んできた

テーマ図

初手からの指し手 ▲7六歩、△8四歩、▲6八銀、△3四歩、▲6六歩、△8五歩、▲7七銀、△7二銀、▲5六歩、△8四銀、▲7八金、△8四銀(図1-1)
【図1-1 矢倉戦法vs棒銀の基本】

【図1-1 矢倉戦法vs棒銀の基本】

図1-1は、先手が自然に矢倉囲いを目指して指し、対する後手が棒銀で攻めてきているところです。棒銀とは、飛車、銀、歩が一直線に並ぶような陣形およびその攻め方のことです。後手は△8四銀として棒銀の形を作ったところですが、ここで先手は指しておきたい手があります。

香介
棒銀については以下の記事も参考にしてね!

図1-1からの指し手
▲7九角(図1-2)

【図1-2 棒銀を見たら角を引く!】

【図1-2 棒銀を見たら角を引く!】

後手が棒銀の陣形に組んできたのを見たら、▲7九角と角を引くのがポイントです。この角引きの意味は、ここから数手進めるとわかります。

歩美
この角引きは矢倉囲いに組むならどちらにせよどこかで指す必要のある手ですよね!

棒銀の攻め筋4パターン

ここから後手の攻めと、それに対する受けを見ていきます。矢倉囲いに対して棒銀で攻めてくる場合攻め方は何通りかあるのですが、今回は以下の4パターンについて解説していきます。

歩美
えー!こんなにあるんですか!?
香介
こうやって書くとたくさんあるように見えるけど、一つ一つは難しくないから大丈夫だよ!

 

単純に9筋から攻めてきた場合

香介
まずはシンプルに9筋から攻めてくる基本の手順をみていくよ!

棒銀の攻めの狙い

図1-2からの指し手
△9五銀(図2-1)

【図2-1 9筋から攻めてくる】

【図2-1 9筋から攻めてくる】

△9五銀と銀を5段目に進出させるのが棒銀の基本の攻めとなります。まずはここから後手の攻めの狙いを見ていきましょう。

棒銀の攻めが成功

図2-1からの指し手
▲9六歩、△8六歩(図2-2)

【図2-2 銀取りに構わず攻めてくる】

【図2-2 銀取りに構わず攻めてくる】

後手の△9五銀に対して、▲9六歩として銀を追い払おうとするのは悪手で、銀取りに構わず△8六歩と攻められてしまいます。次に▲9五歩と銀を取っても△8七歩成の攻めが厳しくなります。

図2-2からの指し手
▲8六歩、△同銀、▲同銀、△同飛、▲8七歩、△8二飛(図2-3)

【図2-3 銀交換されて後手優勢】

【図2-3 銀交換されて後手優勢】

図2-2からお互いに銀と歩を交換する展開になりました。基本的に棒銀の攻めは銀交換出来たら成功と覚えておいてください。後手はこの後△6六角とする手が残っているため、▲7七銀などと取った銀を打って受けたいところです。しかし後手は銀と歩が持ち駒となって好きなタイミングで使えるのに対し、先手は持ち駒がなくなってしまいます。

歩美
矢倉囲いに組もうとするといっつもこんな感じになっちゃうんです…。どうしたらよかったんでしょう??
香介
ここから棒銀の攻めの受け方を見ていくよ。ちなみに銀交換した後の棒銀の攻め筋について知りたい人は以下の記事も参考にしてね!

角を使って棒銀を受ける

図2-1 からの指し手
▲6八角(図2-4)

【図2-4 8六の地点に駒を足す】

【図2-4 8六の地点に駒を足す】

図2-1 に戻ります。後手が△9五銀として来たら、▲6八角として受けるのが定跡です。先手の角は7七の銀を挟んで8六に利きがあるため、先ほどのように△8六歩から攻めてこられても、▲同歩、△同銀、▲同銀、△同飛、▲同角と進み攻めを止められます。

歩美
なるほど!角を受けに使うんですね!

補足
あらかじめ▲9四歩として銀の進出を防ぐのは?

【図a-1 これで棒銀を防げたように見える】

【図a-1 これで棒銀を防げたように見える】

図a-1は、テーマ図から▲9六歩と突いた局面です。これで後手は単純に△9五銀と出ることができなくなったため棒銀が受かったように見えます。しかし、端の歩を突いたことで新たな争点が生まれてしまいました。

【図a-2 端から攻められる】

【図a-2 端から攻められる】

図a-1からは△9四歩~△9五歩という攻め筋が成立します。ここから▲同歩、△同銀、▲同香、△同香と進んで攻めていく形になります。これでは1手掛けて後手の攻めを手伝ったような形になってしまいました。

なおこの詳しい攻め筋については以下の記事を参照ください。

 

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7筋から攻めてきた場合

香介
次は7筋から攻めてくるパターンを見ていくよ!

後手は7筋に手を付けてくる

図1-2 からの指し手
△7四歩(図3-1)

【図3-1 今度は7筋から攻めてきた】

【図3-1 今度は7筋から攻めてきた】

図1-2 に戻ります。後手はいきなり△9五銀とするのは無理筋だったので、今度は△7四歩として7筋に手を付けてきました。この手にはどんな意味があるのでしょう?

飛車と角を両方使った攻め

図3-1からの指し手
▲6八角、△7五歩、▲同歩、△同銀、▲7六歩(図3-2)

【図3-2 8筋からの攻めは受かっているが…】

【図3-2 8筋からの攻めは受かっているが…】

先手は先ほどと同様に▲6八角と角を上げたところ、後手は△7五歩から攻めてきました。先手の角が8六まで利いているため後手の△8六歩からの攻めは受かっているようですが、狙いはそれだけではないようです。

図3-2からの指し手
△6六銀、▲同銀、△同角(図3-3)

【図3-3 角を使った攻め】

【図3-3 角を使った攻め】

後手は△6六銀として角を使って攻めてきました。△7五銀と出る手は、8筋に出て飛車を使う攻めと、6筋に出て角を使う攻めの2通りの攻め筋を見ていたのです。これら2種類の攻めを同時に受けるのはなかなか簡単ではありません。

歩美
あっ!角の攻め見えてませんでした!ついつい飛車ばかり見てしまいますね!

飛車のコビンを狙う

図3-1 からの指し手
▲4六角、△7三桂(図3-4)

【図3-4 飛車のコビンを攻める】

【図3-4 飛車のコビンを攻める】

図3-1 に戻ります。後手が△7四歩と突いたら、▲4六角として相手の飛車に働きかけるのが好手です。この手は飛車取りに当たっているため△7三桂として受けてきました。

香介
図3-4の局面では、もし後手が銀を動かしたら▲7三角成として桂馬が取れることに注目してね!

図3-4からの指し手
▲5八金、△6二金、▲6七金右、△7五歩、▲同歩、△同銀、▲7四歩(図3-5)

【図3-5 桂頭を狙って優勢】

【図3-5 桂頭を狙って優勢】

後手は△6二金と桂馬にヒモをつけてから、△7五歩として攻めてきます。先手はその間に右金を6七に上げ、△6六銀から角を使って攻めてくるのをあらかじめ防いでおきます。歩が手に入ったら▲7四歩と打って桂馬を取りに行けば優勢となります。

 

角を引いて使ってきた場合

香介
次は角を引いて使ってきたときの変化を見ていこう!

後手は角を引いて駒を足してくる

図1-2 からの指し手
△5四歩、▲6八角、△3二銀、▲5八金、△3一角(図4-1)

【図4-1 8六の地点に駒を足す】

図1-2まで戻ります。今度は後手が△3一角として角を引いてきました。この手は、8六に利いている駒を1枚足しているため、今まで通りに受けようとすると駒が1枚足りなくなってしまいます。

銀を引いてかわす

図4-1からの指し手
▲6七金右、△9五銀、▲8八銀(図4-2)

【図4-2 銀を引いて受けるのがポイント】

【図4-2 銀を引いて受けるのがポイント】

後手が角を引いて棒銀で攻めてきたときには、▲8八銀と銀を引いて受けるのがポイントです。このあと△8六歩と攻めてきても、▲同歩、△同銀、▲8七歩とすればこれ以上後手の攻めがありません。

【参考図a 菊水矢倉】

【参考図a 菊水矢倉】

また8八銀と引いた形からは、矢倉囲いに組むのはあきらめて「菊水矢倉(きくすいやぐら)」を目指して駒組みを進めるのが良いでしょう。この囲いは上部がしっかりしているため、棒銀などの8筋からの攻めに強いのが特長です。一方で横の守りはスカスカなので、飛車を打ち込まれると弱いというデメリットがあります。

歩美
へえ~。菊水矢倉なんてかこいもあるんですね~。初めて知りました!
香介
何が何でも矢倉囲いに組もうとするんじゃなくて、状況に応じていろいろな囲いを使い分けられるようになるといいね!

 

角のラインを使った攻め

香介
最後は角にラインを使って6筋を絡めてくる攻め筋を見ていこう!これまでで一番複雑な変化になるから覚悟してね!
歩美
頑張ります!

6筋の歩を突き捨ててくる

図1-2 からの指し手
△6四歩、▲6八角、△6五歩(図5-1)

【図5-1 6筋の歩を捨ててくる】

【図5-1 6筋の歩を捨ててくる】

図1-2 まで戻ります。後手はいきなり6筋の歩を突き捨ててきました。このあと△6四歩とされると劣勢なので、もちろんここは▲同歩として歩を取りますが、後手にはどんな狙いがあるのでしょう。

歩美
歩を1枚ゲット!ラッキーです!
香介
こうやってタダで歩を捨ててくるときは何か攻めの狙いがあるときだよ!ラッキーと思ってすぐ歩を取るんじゃなくて、相手の狙いが何か考える癖を付けようね!

図5-1からの指し手
▲6五歩、△9五銀(図5-2)

【図5-2 一見今までの棒銀と同じに見えるが】

【図5-2 一見今までの棒銀と同じだが】

後手は6筋の歩を捨ててから、△9五銀として攻めてきました。一見すると今までの棒銀の攻めと同じですが、これには正しい受け方を知らないとここから先手陣が崩壊してしまいます。

後手の攻めが炸裂!

図5-2からの指し手
▲9六歩、△8六歩、▲同歩、△同銀、▲同銀、△9九角成(図5-3)

【図5-3 角を成り込まれて劣勢】

【図5-3 角を成り込まれて劣勢】

図5-2から▲9六歩などと指してしまうと、△8六歩から棒銀の攻めが決まってしまいます。▲同歩、△同銀、▲同銀と進んだタイミングで、後手の角のラインが先手陣まで直通してしまうため、△9九角成と馬を作られてしまいます。図5-3の局面では先手がわずかに駒得はしていますが、すぐに取り返されてしまいそうな格好です。

歩美
あーっ!6筋の歩を捨てたのは角のラインを通すためだったんですね!実戦でこんな攻めを決められたら悔しすぎます…

飛車を5筋に回る受け

図5-2 からの指し手
▲5五歩、△同角、▲5八飛(図5-4)

【図5-4 角をおびき寄せて飛車を回る】

【図5-4 角をおびき寄せて飛車を回る】

図5-2 ではどのように指せばよかったのでしょう?ここでは一旦▲5五歩として相手の角の利きを止めるのが正解です。△同角として来たら、▲5八飛と回って次の角取りと▲5三飛成を見せます。ここで相手の角が△4四角などと逃げてくれれば、▲5五歩と打って角のラインを止めれば後手の攻めは止まります。

香介
この手筋は知らないと指せないかもね!しっかり覚えよう!

後手は無理やり攻めてくる

図5-4からの指し手
△8六歩、▲同歩、△同銀(図5-5)

【図5-5 角取りに構わず攻めてきた】

【図5-5 角取りに構わず攻めてきた】

後手は角取りに構わず攻めてきました。△8六歩に対してはさすがに無視できないため、▲同歩、△同銀と進みます。図5-5の局面では▲同銀と取りますか?▲5五飛と角を取りますか?

図5-5からの指し手
▲5五飛、△7七銀、▲同桂、△8九飛成(図5-6)

【図5-6 後手の王手をどう受ける?】

【図5-6 後手の王手をどう受ける?】

図5-5で▲同銀と取ってしまうと、△9九角成で角を逃げながら香車を取られてしまいます。そのためここで角を取るのが正解です。図5-6では龍で王手がかけられていますが、どのように受けるのが良いでしょう?

飛車取りを恐れずに先手も攻める

図5-6からの指し手
▲7九銀、△9九龍、▲6四歩、△5四香(図5-7)

【図5-7 田楽刺しの筋が見えるが】

【図5-7 田楽刺しの筋が見えるが】

図5-6では駒をケチらずに▲7九銀と受けに使う手が良い手です。ここで▲7九金などと盤上の駒で受けると、△7八銀などとガジガジ攻められます。後手は早い攻めがないので△9九龍と香車を取り、次の△5四香の田楽刺しを狙いますが、先手はこれを受けないで▲6四歩と攻め合うのが正解です。

歩美
だいぶ局面が複雑になってきました…。難しい…。
香介
実戦では今回紹介した通りに進むとは限らないから、何となくの雰囲気だけつかんでくれれば大丈夫だよ!

図5-7からの指し手
▲5四飛、△同歩、▲6三歩成、△4二玉、▲6五桂(図5-8)

【図5-8 次は▲7七角打or▲5三桂不成】

図5-7からは一旦香車を回収してからと金を作り、さらに6五桂と跳ねます。この手は次に▲5三桂歩成と金取りを狙う手や、▲7七角打ちと両取りを狙う手があり先手の攻めが続く形です。

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まとめ

香介
今回は一直線に棒銀に攻めてくる相手に対して矢倉戦法で受ける指し方を見てきたよ!ポイントをまとめよう!

POINT

  • 角を引いて▲6八角として受けるのが基本
  • 後手が7筋の歩を突いてきたら▲4六角と出て飛車のコビンを狙う
  • 後手が角を引いて駒を足して来たら▲8八銀と引いて菊水矢倉に組み替え
  • 後手が6筋の歩を突き捨てて角のラインを使ってきたら、▲5五歩で角を呼び込んでから▲5八飛
歩美
複雑な変化もあって難しかったですけど頑張ってマスターします!

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  1. U より:

    テーマ図までの棋譜がおかしい感じがするのですが本当に合ってますか?

    • konan より:

      ご指摘ありがとうございます。▲7二金⇒▲7八金に訂正いたしました。

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【図2-1 9筋から攻めてくる】

【図2-1 9筋から攻めてくる】

【図1-2 棒銀を見たら角を引く!】

【図1-2 棒銀を見たら角を引く!】

【図3-1 今度は7筋から攻めてきた】

【図3-1 今度は7筋から攻めてきた】

【図5-2 一見今までの棒銀と同じに見えるが】

【図5-2 一見今までの棒銀と同じに見えるが】