将棋の勉強法などを聞くと、詰将棋は毎日解くべきという方が本当に多いですよね。今回は、そんな詰将棋を解くとどんな効果があるのか?本当に棋力が伸びるのか?というところを書いていこうと思います。
目次
毎日詰将棋を解くべし!これ本当?
多くの人が、将棋を強くなるには毎日詰将棋を解く必要があると主張しています。詰将棋を解くことで、終盤の寄せの形を覚えることができ、終盤力アップにつながると言われています。読者の方の中にも、こういった主張を信じて毎日詰将棋を解くようにしている方はいらっしゃるでしょう。
一方で、詰将棋は解いても効果はないと主張する方も一定数います。詰将棋はパズル的な要素が強すぎて、実戦には役に立たないというのです。
では一体どちらの主張が正しいのでしょうか?今回は詰将棋を解くことについての私なりの意見を述べていきます。
一般的に言われる詰将棋の効果はウソ!?
詰将棋で、詰みのパターンと寄せの手筋を覚えられる?
一般的に、詰将棋を解くことで得られる効果は以下の2つになると思います。
- 詰みの形を覚えられる
- 寄せの手筋を学べる
確かに、詰みのパターンを覚えたり寄せの手筋を学ぶことは、棋力向上に大いに役立ちます。また詰将棋はそのルールの特性上、詰みや寄せのトレーニングにはうってつけのように思えます。
たとえば以下のような3手詰めを考えてみましょう。
この詰将棋の解答は、▲1三銀、△同桂、▲2二金となります。この問題の一手目は、「相手玉の逃げ道を塞ぐ手筋」で、△同桂と取らせることで相手玉が1三に逃げられないようにしています。最後は▲2二金と打てば詰みとなります。なお初手を▲1三金としてしまうと、3手目に詰ませられる駒がなくなります。これは「金はトドメに残す」という詰みのパターンにのっとっています。
このように、確かに詰将棋を解くことで詰みの形や寄せの手筋を学ぶことができそうです。
実戦で出てこないような形の詰将棋は??
では、次に以下のような詰将棋を考えてみましょう。
この問題の答えは、▲5二香、△6一玉、▲7二角、△7一玉、▲8一角成、△同玉、▲8二香、△7一玉、▲7二香、△6一玉、▲6二香までの11手詰となります。
この詰将棋は作者不明の古典詰将棋なのですが、歩と香車が並ぶきれいな形をしていますね。ただ、この作品はパズルとしての要素が強く、あまり将棋の終盤の筋を覚えられる形ではないように思えます。
結局詰将棋で終盤力はつくの?
詰将棋を終盤(特に詰み)のトレーニングとしてみると、あまり優れた勉強法ではないかもしれません。上で述べたように、パズルの要素が強い詰将棋は、詰みの形を覚えたり、寄せの手筋を学ぶには向いていないからです。
また詰将棋はそのルールの特性上、どんなに詰将棋で勉強しても、実戦で出てくる寄せの手筋を完全に網羅できないという問題点があります。
たとえば以下のような問題を解いてみましょう。図5の局面から相手玉を詰めてみてください。
答えは▲9一銀成、△同玉、▲8二金となります。この問題のポイントは、初手に香車を取るところで、後手はこれに対して△9三玉と逃げても▲9二金で詰んでしまいます。
この隅の香車を取る手筋は実戦でも頻出なのですが、通常の詰将棋ではこの手筋は絶対に出てきません。というのも、この手筋を使って相手玉を詰ませるとなると、詰みの局面で必ず香車が余ることになります。駒を余らせることを許さない詰将棋のルールでは、どんなにたくさんの問題を解いてもこの手筋を学ぶことができないのです。
詰将棋は終盤のトレーニングじゃない!
詰将棋は、読みの力を鍛える基礎トレーニング
ここまで、詰将棋は終盤力をつけるにはトレーニングとして不十分だと述べてきました。しかし、実際に将棋が強い人を見てみると詰将棋を日々の勉強に取り入れている人は本当に多いです。また読者の中にも、詰将棋を解くことで棋力が向上したという経験を持っている方はいらっしゃるのではないでしょうか?
私の考えですが、詰将棋を解くことで得られる1番のメリットは脳内で将棋盤を構築する能力(=読みの力)を高められることです。
たとえば、将棋を指していて3手先の読みをしたとします。このとき頭の中で将棋盤を思い描いて駒を動かし、3手先の局面を想像したのではないでしょうか?では、5手先、7手先、9手先……とさらに長い手数を読もうとするとき、頭の中はどうなるでしょう?長い手数を読もうとすると、頭の中の将棋盤の映像が徐々にぼやけていったと思います。
脳内将棋盤を構築する能力とは、頭の中の将棋盤で駒を動かし、より長く、より難解な手順を指せるようになる能力です。詰将棋は自分の王手と相手の応手を正確に読む必要がありますから、必然的に読みの力のトレーニングとなるわけです。
この読みの力というものは、棋力を向上させる上で序盤、中盤、終盤に関わらず必要な能力となります。これはボクサーの走り込みトレーニングに例えることができます。ボクサーが走り込みばかりやっても、鋭いパンチを打てるようにはならないでしょう。しかし、走ることによって強い足腰やスタミナが得られ、結果としてボクシングが強くなっていくのです(筆者はボクシングについてそこまで詳しいわけではないので間違っているかもしれませんが…)。詰将棋も、将棋を指す上での基礎体力を作るトレーニングと考えることができるでしょう。
詰将棋は対局でのうっかりミスを減らす効果も!
将棋のルールを覚えたての頃、相手の角の利きを見落としてあっさり飛車を取られてしまったり、タダで取られるところに駒を進めてしまうといったことがありませんでしたか?
こうした駒の利きの見落としは、ある程度上達すれば減っていくのですが、有段者になってもやはり駒の利きの見落としというのはゼロにはなりません。詰将棋で盤面をしっかり見る癖を付ければ、こうした利きの見落としを減らす効果もあるのです。
詰将棋の本当の効果まとめ
ここまでの話をまとめます。
- 詰将棋は終盤力を鍛えられるものもある
- パズル要素が強い詰将棋は終盤力を鍛える効果が薄い
- 詰将棋の一番の効果は「読み」の力をつけられる
- 駒の利きの見落としを減らす効果も
詰将棋は終盤力をつけるために解くものだと思われがちですが、実際には読みの基礎トレーニングとしての側面が強いのです。そのため詰将棋は、終盤だけでなく、序盤~中盤の棋力も向上させる効果があるのです。
詰将棋を解いて強くなろう!
終盤力を鍛えたい人は、実戦型の詰将棋を解こう
終盤力を鍛えたいという方は、パズル的な要素が薄く、実戦形の詰将棋を解くことがオススメです。特に、及川拓馬先生の「最強の終盤 詰みと寄せの採集用手筋104」や、本間博先生の「妙手に俗手、駒余りもあり!実戦詰め筋辞典」などは、実戦を模した局面ばかり登場する上、駒を取る手や駒余りも頻出するような、少し変わった詰将棋の本となります(駒余りがあるのは正確には詰将棋とは呼びませんが…)。終盤の手筋や形を学びたいという方には最適な本だと思います。
読みの力を鍛えたい人は、長手数の詰将棋を解こう
読みの力を鍛えたいという方は、長手数の詰将棋を解くことをオススメします。ただ、単に長い手数の詰将棋を解こうとしても難易度が高く挫折してしまう可能性が高いので、手数が長いわりに難易度の低い詰将棋を解くとよいでしょう。
中原誠先生の「実戦式詰め将棋-九級から初段まで-」は比較的優しい問題が多いですが、手数は最長で11手詰まであり、読みの力をつけるには最適です。
駒の利きを見逃しがちな人は、短手数の詰将棋を解こう
駒の利きの見逃しが多い人は、長い手数の詰将棋を解くよりも、短手数で難度の高い詰将棋を解くのが良いでしょう。森信雄先生の「3手・5手詰将棋」は、短手数にもかかわらずパズル要素が強く難易度の高めの作品がそろっています。こうした詰将棋でトレーニングすることで、凡ミスや頓死を減らすことができます。
まとめ
- 詰将棋は終盤力を鍛えられるものもある
- パズル要素が強い詰将棋は終盤力を鍛える効果が薄い
- 詰将棋の一番の効果は「読み」の力をつけられる
- 駒の利きの見落としを減らす効果も
棋士のような将棋の強い人なら詰将棋に強い人もいらっしゃるでしょうが、素人が将棋の上達を目指して難しい詰将棋に時間をかけるのはどうでしょうか?
詰将棋のような局面は何百、何千局に一度あるかどうかという確率かと思います。
しかも相手の玉のみならず自玉が詰まされる手順まで見極めないといけません。
将棋というゲーム自体、相手より一手早く玉を詰めればいいだけですので、無理して攻める必要も無いわけで・・
いわば一手すき、二手すき等の感覚を磨くほうが大切かと思います。
玉は包むように寄せよという格言のある通り、何が何でも一手の無駄も無く攻めたり、切羽詰まった局面で必ず詰ますというより相手の寄せより一手早く玉を寄せる局面を作るほうが大切で、言うなれば詰将棋のようにうまく寄せられればそれは何百局のただの一局で相手がうまかったと称えるほうがよさそうに思いますけど。
詰将棋をやってみようと思います。良記事だった。
詰将棋をやり始めてから、頭の回転が格段によくなりました。
やるやらないで迷っているならば、詰将棋はやって損はしないのでやるべきだと思います。