四間飛車

四間飛車vs右四間飛車

投稿日: 11/03/2018 更新日:

キャラクターイラスト:さゆ吉様

右四間飛車は、飛車を4筋(後手の場合は6筋)に振る指し方で、非常に攻撃的な戦法として知られています。プロの将棋ではほとんど指されることはありませんがアマチュアには人気の戦法で、飛車、角、銀、桂馬をうまく組み合わせた破壊力に悩まされている方も多いのではないでしょうか?

歩美
右四間飛車っていやな戦法ですよね~。どうにか対策できないんですか!?
香介
今回は四間飛車で右四間飛車を対策する指し方を解説するよ。右四間飛車は正しい受け方を知っておけばそこまで怖い戦法じゃないんだ。

今回の記事では、四間飛車vs右四間飛車の戦いを解説していきます。なお、居飛車党の方で右四間飛車の対策をしたいという方は以下の記事を参考にしてみてください。

また右四間飛車の基本的な攻め筋は以下の記事で解説しています。

四間飛車の定跡まとめへ戻る

参考棋書:1冊でわかる右四間飛車 その狙いと対策

香介
今回の記事はマイナビ将棋BOOKSの「1冊でわかる右四間飛車 その狙いと対策」を参考にしたよ。四間飛車vs右四間飛車についてかなり詳しく解説された本なんだ。
歩美
ここからが本編です!はやく右四間の対策を教えてくださいっ!

YouTubeの動画で学ぶ、四間飛車

香介
今回の記事は動画でも解説しているよ!

歩美
サイトで学んだ内容を動画で復習すればバッチリですね!

四間飛車vs右四間飛車の基本形

テーマ図

【図1-1 四間飛車vs右四間飛車】

【図1-1 四間飛車vs右四間飛車】

四間飛車vs右四間飛車の基本形は図1-1のようになります。

先手は四間飛車に構えて片美濃囲い、後手は右四間飛車に構えて舟囲いに組んでいるところです。先手は銀を5六に上げているのがポイントで、6五の地点に効きを足しています

歩美
相手が右四間に構えてきたら早めに▲5六銀と上げておくんですね~。

図1-1からの指し手
▲4六歩、△7三桂、▲9八香(図1-2

【図1-2 香車を上げておくのがポイント】

【図1-2 香車を上げておくのがポイント】

先手は▲5八金と本美濃囲いに組むを保留して、▲4六歩と上げます。また、後手が△7三桂と跳ねたタイミングに合わせて▲9八香と上がります。この香車を上げた意味は後ほどわかります。

後手は桂馬を跳ねたことでいつでも△8五桂から仕掛けることができる態勢になりました。後手の仕掛けのタイミングによって四間飛車側の対応も変わってくるのですが、ここから順を追ってみていきましょう。

香介
ちなみに▲4六歩とせずに普通に美濃に組んでしまう手も成立するよ。ただ、慣れないうちは5八金をギリギリまで保留しておく方が指しやすいかな。

 

片美濃囲いでの受け方

△8五桂には▲8六角とかわす

図1-2からの指し手
△8五桂(図2-1

【図2-1 後手がいきなり仕掛ける】

【図2-1 後手がいきなり仕掛ける】

後手はいきなり△8五桂と仕掛けてきました。角をどこに逃げるのが良いでしょう?

図2-1からの指し手
▲8六角、△6五歩(図2-2

【図2-2 歩で取る?銀で取る?】

【図2-2 歩で取る?銀で取る?】

先手は▲8六角と逃げました。対して後手は△6五歩と突いて追撃してきます。この歩は▲同歩ととりますか?▲同銀と取りますか?

香介
▲8六角のところは▲9五角や▲8八角とする手も成り立つよ。でも▲8六角は一番応用が利く筋だから、今回はこの手順をマスターしよう。
歩美
▲9五角は相手の飛車も睨んでて有力そう!でも後手が9四歩と突いてるときは使えないですね~。

 

相手に銀を渡さないように指す

図2-2からの指し手
▲6五歩 △9九角成 ▲7九金(図2-3

【図2-3 7一金と寄れるのが片美濃の強み】

【図2-3 7九金と寄れるのが片美濃の強み】

後手の△6五歩には▲同歩と取るのが正解です。相手の角筋が通ってしまい嫌な感じがしますが、△9九角成に▲7九金としてしまえば問題ありません。

歩美
あっ!後手の馬は次に△9八馬なら▲同飛、△8九馬なら▲同金で取られちゃいますね!後手はせっかく角を成ったのに全然動けませんね!!
香介
その通り!▲7九金で馬を動けなくするために片美濃囲いのままで駒組みを進めたんだ!さらにあらかじめ▲9八香とすることで△9九角成とされたときに香車を取られないようにしているんだ!

補足
△6五歩に同銀と取ったら?

【図2-a ▲6五銀とした場合】

【図2-a ▲6五銀とした場合】

図2-2から▲6五銀と取った場合を考えてみます(図2-a)。

【図2-b △7七銀と打たれて激痛】

【図2-b △7七銀と打たれて激痛】

一見すると銀が捌けて良いようにも思えますが、ここから数手で四間飛車側が悪くなってしまいます。図2-aから△6五銀、▲同歩、△7七銀とすすむと後手の攻めが止まりません(図2-b)。

【図2-c 先手の飛車の働きが悪い】

【図2-c 先手の飛車の働きが悪い】

後手に銀を渡してしまうと図2-bのように△7七銀から攻められてしまいます。ここから▲同桂、△同桂成、▲4八飛、△6五飛と進むと、駒割では銀桂交換の駒得ですが、相手の飛車が金取りに当たっているうえにこちらの飛車は狭くなっていて先手劣勢となってしまいます。

先手は▲6四角を狙う

図2-3 からの指し手
△5五銀、▲同銀、△同馬、▲6四角(図2-4

 

【図2-4 ▲6四角として先手よし】

【図2-4 ▲6四角として先手よし】

後手は図2-3からこれといった攻めがありません。仕方なく△5五銀、▲同銀、△同馬としますが、▲6四角として先手が優勢です。

香介
右四間相手に▲6四角と出る手は常にいい手になりやすいんだ!

 

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美濃囲いでの受け方

図1-2 にもどって別の変化を見ていきます。

香介
ここからは本美濃囲いに組んだ時の戦い方を見てくよ!基本は片美濃のときと同じだけどね。

 

△8五桂には▲8六角が基本

図1-2 からの指し手
△2四歩、▲5八金左、△8五桂(図3-1

【図3-1 美濃囲いにしたタイミングで攻めてきた】

【図3-1 美濃囲いにしたタイミング】

今度は先手が美濃囲いに囲ったタイミングで仕掛けてきた場合について考えます。このときは角はどこにかわしましょうか?

図3-1からの指し手
▲8六角、△6五歩(図3-2

【図3-2 △6五歩には▲同歩?▲同銀?】

【図3-2 △6五歩には▲同歩?▲同銀?】

さて後手は△6五歩と攻めてきましたが、今度も▲同歩と取ってよいのでしょうか?

歩美
さっきは▲同歩としましたよね!▲同銀とすると△同銀、▲同歩、△7七銀とされて先手が不利になりそうです!

先手の狙いはやはり▲6四角

図3-2からの指し手
▲6五歩、△9九角成、▲6四角(図3-3

【図3-3 やはり▲6四角が急所】

【図3-3 やはり▲6四角が急所】

美濃に組んでいるときも△6五歩に対しては▲同歩と取りました。後手はここから△9九角成と馬を作ります。先手は後手の角成に対して▲7九金とはできないので、▲6四角として攻め合います

歩美
う~ん…。今度は四間飛車側がハッキリ良いって感じにはなりませんねえ…。
香介
そう、▲5八金と上がったタイミングに仕掛けられるとこのようなきわどい展開になりがちなんだ。だから▲5八金と上がるのは後手陣に離れ駒があったり、囲いを組み替える途中の守りが薄いタイミングを狙うといいよ。
歩美
相手陣の堅さを見ながら駒組みしていくんですね~。駆け引きが難しそう!

 

高美濃囲いでの受け方

図1-2 にもどって別の変化を見ていきます。

香介
ここからは高美濃囲いに組んだ時の戦い方を見てくよ!今までとは少し違った指し方になるから要注意だ!

 

やっぱり△8五桂には▲8六角

図1-2 からの指し手
△2四歩、▲5八金、△2三玉、▲4七金、△3八銀、▲3六歩、△8五桂(図4-1

【図4-1 高美濃まで組んだ場合】

【図4-1 高美濃まで組んだ場合】

最後に高美濃囲いまで組んだ時の変化を見ていきます。図1-2からお互い囲いを固め合って、先手は高美濃囲い、後手は天守閣美濃まで組みました。このタイミングで後手が仕掛けてきましたが、△8五歩に対してはやはりこの一手です。

図4-1からの指し手
▲8六角、△6五歩(図4-2

【図4-2 また▲同歩でいいのだろうか?】

【図4-2 また▲同歩でいいのだろうか?】

またしても後手は△6五歩と突いてきます。今回も先ほどまでと同様に▲同歩としてよいのでしょうか?

 

高美濃まで組んでいるときは△6五歩に対して▲同銀と取る

図4-2からの指し手
▲6五銀、△同銀、▲同歩、△7七銀(図4-3

【図4-3 △7七銀とされて悪いようだが…】

【図4-3 △7七銀とされて悪いようだが…】

高美濃囲いまで組んでいるときは△6五歩に対して▲同銀と取る手が正解となります。ここから銀交換して後手は△7七銀と急所の銀打ちを放ってきました。さらに何手か進めていきます。

歩美
高美濃のときは△6五歩に▲同銀ですか!?先手がなんだか指しにくそうに見えますケド…。

図4-3からの指し手
▲7七桂、△同桂成、▲4八飛(図4-4

【図4-4 素直に飛車を逃げる】

【図4-4 素直に飛車を逃げる】

図4-3では飛車角両取りなので、まずは▲7七桂とする一手ですが、そこから△同桂成に対して素直に▲4八飛と飛車を逃がしてしまいます。

 

焦点の歩打ち、▲6六歩

図4-4からの指し手
△6五飛、▲6六歩(図4-5

【図4-5 焦点の歩打ち】

【図4-5 焦点の歩打ち】

後手は△6五飛と飛車を走らせる自然な手を指してきました。ここで▲6六歩と焦点に歩を打つのがポイントです。

歩美
複数の駒が効いているところに歩を打つのが「焦点の歩」でしたよね!
香介
その通り!6六には後手の飛車と角が効いているけど、どちらで歩をとっても先手には返し技があるんだ!

図4-5から△同飛と歩を取れば▲7七角として桂馬がタダで取れ、△同角と歩を取れば▲5六金として飛車角両取りになります。

【図4-6 桂馬を取って駒得】

【図4-6 桂馬を取って駒得】

【図4-7 ▲5七金とできるのが高美濃の強み】

【図4-7 ▲5七金とできるのが高美濃の強み】

 

四間飛車側はいかに飛車を捌くかという勝負に

図4-5からの指し手
△8五飛、▲7七角、△8七飛成(図4-8

【図4-8 駒得を活かしきれば先手の勝勢に】

【図4-8 駒得を活かしきれば先手の勝勢に】

後手は6六の歩が取れないため、8五飛と回って龍を作ってきます。これに対し先手は、大駒が捌けていないものの駒割は銀得となっており駒得です。

ここから先手はいかに飛車角を捌くかという勝負になっていきます。

歩美
ここからは難しい勝負になりそうです…。
香介
どうにかして大駒交換に持ち込めれば先手がハッキリ優勢になるって感じだね。

補足
龍を捕まえる変化

【図4-a お互いに端歩を突いている】

【図4-a お互いに端歩を突いている】

図4-aをご覧ください。これは図4-8でお互い9筋の端歩を突き合っていた場合の局面です。このとき、実は後手の龍を取ることができるのです。

図4-aから▲7八銀、△9八竜、▲8七銀打、△9七龍、▲8九桂とすると銀と龍の交換に持ち込むことができます。

【図4-b 後手の龍を捕獲!】

【図4-b 後手の龍を捕獲!】

ただ先手は手順に香車を取られている上に、持ち駒をすべて自陣に投入しています。そのため先手が必ずしも良くなる変化ではなく、互角といってよいでしょう。ただし級位者同士の対局では飛車を持っている方が勝ちやすいため、覚えておいて損はない変化です。

 

まとめ

香介
今回は四間飛車での右四間飛車対策を解説したよ。ポイントをまとめよう!

POINT

  • 早めに▲5六銀と上がっておく、▲9八香と上がる
  • △8五桂の攻めには▲8六角と逃げる
  • △6五歩には基本は▲同歩と取る、ただし高美濃囲いまで組めているときは▲同銀で取る
  • ▲6四角と走る攻め筋を覚えよう
  • 高美濃まで組んでいるときは、▲6六歩の焦点の歩が急所
歩美
今回は細かい変化も多くて難しかったです…。でもしっかり勉強して右四間飛車をコテンパンにやっつけたいです!

 

右四間飛車には、今回の記事では解説できなかった攻め筋がまだまだあります。それらの対策をさらに詳しく知りたい方は、藤倉勇樹先生の「1冊でわかる右四間飛車 その狙いと対策」を読まれることをおすすめします。四間飛車vs右四間飛車の解説がかなり詳しく載っていて、四間飛車党には必須の1冊です。

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【図2-3 7一金と寄れるのが片美濃の強み】

【図2-3 7一金と寄れるのが片美濃の強み】

【図1-2 香車を上げておくのがポイント】

【図1-2 香車を上げておくのがポイント】