この記事では、将棋の8大タイトルの一つ、叡王戦のルールや仕組みについて解説していきます。
目次
叡王戦とは? ― 8大タイトルで最も新しい棋戦
現在の叡王は伊藤匠(2026年4月時点)
2026年4月現在、叡王のタイトルを保持しているのは伊藤匠叡王です。日本将棋連盟の公式サイトによると、伊藤匠叡王は第9期(2023年)に藤井聡太叡王を破って初タイトルを獲得し、第10期(2024年)も防衛して2連覇を達成しています。
ニコニコ動画から生まれたタイトル戦
叡王戦は、8大タイトルの中で最も新しい棋戦です。もともとは2015年に、動画配信サービスを運営する株式会社ドワンゴが主催する一般棋戦として始まりました。
叡王戦の前身は、プロ棋士とAIが対決する「電王戦」です。2015年の電王戦FINALを受け、新たなプロ棋士対コンピューターの棋戦として始まったのが叡王戦でした。当初はプロ棋士間で叡王トーナメントを行い、優勝した叡王とAI(電王)が戦う形式でした。
2017年(第3期)にタイトル戦に昇格し、全プロ棋士が参加する正式なタイトル戦となりました。タイトル戦昇格後は、AI対局は行われていません。
主催者の変遷 ― ドワンゴから不二家へ
叡王戦は主催者が変わっている点も特徴的です。創設時の主催は株式会社ドワンゴでしたが、第5期(2019年)からは株式会社不二家が主催を引き継ぎました。
主催:不二家 特別協賛:ひふみ 協賛:中部電力、株式会社豊田自動織機、豊田通商株式会社、アパリゾート佳水郷
出典:日本将棋連盟「叡王戦」
叡王戦の賞金は非公開
叡王戦で優勝して新しい「叡王」になった棋士には賞金が与えられますが、賞金額は公式には非公開です。ただし、他のタイトル戦の賞金額や、叡王獲得棋士の年間賞金額の推移などから推測すると、報道によると約2,000万円程度ではないかと考えられています。
叡王戦の仕組み ― 段位別予選から五番勝負へ
全棋士が参加!段位別予選と本戦トーナメント
叡王戦には全現役棋士が参加します。参加者は段位別予選を行い、勝ち上がった棋士で本戦トーナメントを開催。本戦トーナメントの優勝者が叡王への挑戦権を得ます。
出場資格:全現役棋士
出典:日本将棋連盟「叡王戦」
- 全現役棋士が参加
- 段位別予選→本戦トーナメント→五番勝負
- 本戦の勝ち上がり1名が叡王に挑戦
叡王戦の全体フロー
叡王戦の全体の流れを図にまとめると、以下のようになります。

段位別予選 ― 段位ごとにトーナメント戦
段位別予選は、棋士の段位(九段〜四段)ごとにトーナメントを行う方式です。各段から一定人数が本戦トーナメントに進出します。
段位別予選の持ち時間は各1時間(チェスクロック使用)と、他のタイトル戦の予選に比べて短めです。テンポよく対局が進むのが特徴です。
本戦トーナメント ― 段位別予選の勝者+シードで挑戦者を決定
段位別予選を勝ち上がった棋士に加え、前期の成績などに基づくシード棋士が加わり、本戦トーナメントが行われます。本戦トーナメントの持ち時間は各3時間(チェスクロック使用)です。
本戦トーナメントの決勝は三番勝負で行われ、先に2勝した棋士が叡王への挑戦権を獲得します。
叡王戦のルール ― チェスクロック使用の五番勝負
- タイトル戦は五番勝負(先に3勝で獲得)
- 持ち時間は各4時間(チェスクロック使用)
叡王保持者と挑戦者の五番勝負!
本戦トーナメントを勝ち抜いた挑戦者は、叡王保持者と五番勝負を行います。先に3勝した棋士が新たな叡王となります。
タイトル戦:4時間(チェスクロック使用)
出典:日本将棋連盟「叡王戦」
8大タイトルの中でも、五番勝負で行われるのは叡王戦・棋王戦・棋聖戦の3つです。竜王戦や名人戦の七番勝負に比べると短期決戦となるため、一局一局の重みが大きくなります。
チェスクロック使用が特徴
叡王戦の大きな特徴は、タイトル戦の五番勝負を含め全対局でチェスクロックを使用する点です。通常の将棋の対局では、1分未満の考慮時間は消費時間に計上されませんが、チェスクロックの場合は秒単位で正確に計測されます。
各段階の持ち時間まとめ
| 段階 | 持ち時間 | 備考 |
|---|---|---|
| 段位別予選 | 各1時間 | チェスクロック使用 |
| 本戦トーナメント | 各3時間 | チェスクロック使用 |
| 五番勝負 | 各4時間 | チェスクロック使用 |
永世叡王 ― 通算5期保持で獲得
永世叡王の条件
将棋の各タイトルには、一定回数以上タイトルを獲得した棋士に与えられる「永世称号」が存在します。叡王戦にも永世叡王の規定が設けられています。
永世叡王 通算5期保持
永世叡王の条件は「通算5期保持」です。2026年4月現在、永世叡王の資格を持つ棋士はまだいません。最多保持は藤井聡太の3期(第6期〜第8期)で、次いで伊藤匠の2期(第9期〜第10期)となっています。
歴代の叡王は?有名な棋士まとめ
藤井聡太 ― 最年少叡王、3連覇を達成
藤井聡太は第6期(2020年)に豊島将之叡王を3勝2敗で破り、叡王位を獲得しました。その後、第7期・第8期と防衛し、3連覇を達成。叡王戦の歴代最多タイトル保持者です(出典)。
藤井聡太は叡王を含む八冠独占(2023年)も達成しており、将棋界の歴史を塗り替え続けている棋士です。第9期(2023年)には伊藤匠に2勝3敗で叡王位を失いましたが、他のタイトルでも輝かしい実績を残しています。
伊藤匠 ― 藤井聡太から叡王を奪取、現在2連覇中
伊藤匠は第9期(2023年)の叡王戦五番勝負で、八冠保持中だった藤井聡太を3勝2敗で破り、初タイトルとなる叡王位を獲得しました。この勝利により藤井聡太の八冠独占が崩れたことで大きな注目を集めました(出典)。
第10期(2024年)では斎藤慎太郎八段の挑戦を3勝2敗で退け、見事2連覇を達成。第11期(2025年)でも叡王として防衛戦を戦っています。
豊島将之 ― 叡王戦の激闘を彩った棋士
豊島将之は第5期(2019年)に永瀬拓矢叡王を破って叡王位を獲得しました。この五番勝負は2局の持将棋(引き分け)を含む歴史的な激闘となりました(出典)。
豊島は叡王・竜王・名人の三冠を保持した実力者ですが、第6期(2020年)では藤井聡太に2勝3敗で敗れ、叡王位を失っています。
高見泰地・永瀬拓矢 ― タイトル戦昇格後の初代・2代叡王
第3期(2017年)でタイトル戦に昇格した叡王戦の初代叡王となったのが高見泰地です。金井恒太六段を4勝0敗のストレートで破りました。翌第4期(2018年)では永瀬拓矢に0勝4敗で敗れ、叡王位を失いました(出典)。
歴代叡王一覧
叡王戦の歴代結果を一覧にまとめます。第1期・第2期はタイトル戦昇格前の一般棋戦として行われました。(日本将棋連盟 叡王戦ページより)
| 期 | 年度 | 叡王 | スコア | 対戦相手 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1期 | 2015 | 山崎隆之 | 2-0 | 郷田真隆 | 一般棋戦 |
| 第2期 | 2016 | 佐藤天彦 | 2-0 | 千田翔太 | 一般棋戦 |
| 第3期 | 2017 | 高見泰地 | 4-0 | 金井恒太 | タイトル戦昇格 |
| 第4期 | 2018 | 永瀬拓矢 | 4-0 | 高見泰地 | |
| 第5期 | 2019 | 豊島将之 | 4(2持)3 | 永瀬拓矢 | 持将棋2局あり |
| 第6期 | 2020 | 藤井聡太 | 3-2 | 豊島将之 | 五番勝負に変更 |
| 第7期 | 2021 | 藤井聡太 | 3-0 | 出口若武 | |
| 第8期 | 2022 | 藤井聡太 | 3-1 | 菅井竜也 | |
| 第9期 | 2023 | 伊藤匠 | 3-2 | 藤井聡太 | 八冠独占崩れる |
| 第10期 | 2024 | 伊藤匠 | 3-2 | 斎藤慎太郎 |
※第11期(2025年)は伊藤匠叡王 vs 斎藤慎太郎八段の五番勝負が進行中です。
叡王戦の基本情報まとめ
| 正式名称 | 叡王戦 |
|---|---|
| 主催 | 不二家(出典) |
| 特別協賛 | ひふみ(出典) |
| 創設 | 2015年(一般棋戦)/ 2017年(タイトル戦昇格) |
| 賞金 | 非公開(推定約2,000万円) |
| 番勝負 | 五番勝負(先に3勝で獲得) |
| 持ち時間 | 各4時間・チェスクロック使用(出典) |
| 永世称号 | 永世叡王(通算5期保持 / 出典) |
| 永世称号保持者 | なし(2026年4月現在) |





