この記事では、将棋の名人戦・順位戦のシステムや、名人の決め方について初心者にもわかりやすく解説していきます。
目次
名人戦とは?
現在の名人は藤井聡太(2026年4月時点)
2026年4月現在、名人のタイトルを保持しているのは藤井聡太名人です。日本将棋連盟の公式サイトによると、藤井聡太名人は第81期(2023年)に渡辺明名人を破って名人位を獲得し、第82期・第83期と3期連続で防衛しています。2026年4月からは第84期名人戦七番勝負が進行中です。
将棋界で最も歴史と格式のあるタイトル戦
名人戦は、竜王戦と並び将棋界の最高峰に位置するタイトル戦です。竜王戦が賞金額で最高峰であるのに対し、名人戦は歴史と格式で最高峰とされています。
フリークラスを除いた棋士をA級からC級2組の5つの組に分けてリーグ戦を行います。
A級優勝者が、例年4月から7月にかけて七番勝負を行います。
主催は朝日新聞社と毎日新聞社で、大和証券グループが特別協賛しています。
名人の歴史は江戸時代から
将棋の「名人」という称号の起源は江戸時代までさかのぼります。当時の名人は世襲制で、大橋本家・大橋分家・伊藤家という3つの家の中で最も強い棋士が名人の称号を受け継ぐシステムでした。
現在のように実力で名人が決められるようになったのは1935年からです。初めての実力制名人を決めるリーグ戦は2年にもわたり、1937年に木村義雄が初代実力制名人となりました。
名人戦の賞金額
名人戦の正確な賞金額は公式には非公開ですが、報道によると約2,000万円前後とされています。賞金額では竜王戦(優勝4,400万円)に及びませんが、歴史と権威の面では将棋界最高のタイトルと位置づけられています。
名人戦の仕組み
順位戦を勝ち上がってA級1位になること!
名人への挑戦権を得るには、「順位戦」というリーグ戦で勝ち上がる必要があります。将棋のプロ棋士はフリークラスを除き、A級・B級1組・B級2組・C級1組・C級2組の5つのクラスに分けられています。
棋士は1年かけて同じクラス内で対局し、成績が優秀な棋士は一つ上のクラスに昇級、成績が悪かった棋士は下のクラスに降級します。そして最上位クラスであるA級で最優秀成績を取った棋士が、名人への挑戦権を獲得できます。
順位戦のクラスと昇級・降級の仕組み
名人戦・順位戦の全体の流れを図にまとめると、以下のようになります。

各クラスの詳細は以下の通りです。
フリークラスを除いた棋士をA級からC級2組の5つの組に分けてリーグ戦を行います。持時間は全て各6時間です。
| クラス | 人数 | 対局数 | 昇級枠 | 降級 |
|---|---|---|---|---|
| A級 | 10名 | 総当たり9局 | 1位→名人挑戦 | 下位2名がB級1組へ降級 |
| B級1組 | 13名 | 各12〜13局 | 上位2名がA級へ | 下位3名がB級2組へ降級 |
| B級2組 | 各期変動 | 10局 | 上位3名がB級1組へ | 降級点制度(4人に1名の割合) |
| C級1組 | 各期変動 | 10局 | 上位3名がB級2組へ | 降級点制度(4.5人に1名の割合) |
| C級2組 | 各期変動 | 10局 | 上位3名がC級1組へ | 降級点3回でフリークラスへ |
新しくプロ棋士(四段)になった棋士はC級2組からスタートします。そこから毎年リーグ戦を勝ち抜いて昇級を重ね、A級にたどり着くまでには最短でも5年かかります。名人への道のりがいかに長く厳しいかがわかりますね。
名人戦のルール
名人と挑戦者の七番勝負
順位戦A級で最優秀成績をおさめた棋士が挑戦者となり、現名人と七番勝負を戦います。先に4勝したほうが名人のタイトルを獲得します。A級で複数の棋士が同率1位となった場合は、プレーオフ(同率決戦)が行われます。
A級についてはプレーオフの結果、最高成績者を決め、名人と七番勝負を行い、4勝したほうが名人になります。
名人戦七番勝負は例年4月から7月にかけて行われ、全国各地の由緒ある会場で対局が行われます。
持ち時間は9時間!2日制の対局
名人戦七番勝負の持ち時間は各9時間で、1局を2日かけて行います。この持ち時間はプロの将棋の対局の中でも最長です。
A級優勝者が、例年4月から7月にかけて七番勝負を行います。持ち時間は9時間です。
なお、順位戦(予選リーグ)の持ち時間は全クラス共通で各6時間です。七番勝負では9時間とさらに長くなり、まさに棋士の体力・精神力の限界を試す戦いとなります。
封じ手のシステム
2日制の対局では、1日目の終わりに「封じ手」を行います。封じ手とは、1日目の最後の1手を実際には盤上で指さずに、紙に指し手を書いて封筒に入れ、記録係に渡すというシステムです。
これは、1日目と2日目の間の対局中断中に、手番となる対局者が次の手を考えて有利にならないようにするためのルールです。封筒は2日目の対局開始時に開封され、その手が盤上で指されます。
永世名人
名人位を通算5期で永世名人の資格
名人位を通算5期以上保持した棋士は、「永世名人」の資格を得ることができます。
永世名人 通算5期保持
永世名人の資格を得た棋士は、引退後に「○世名人」の称号を名乗ることができます。番号は十四世から始まりますが、これはかつて名人が世襲制だった時代の最後の名人が十三世であったことに由来しています。
歴代の永世名人
実力制になって以降、永世名人の資格を獲得した棋士は以下の通りです。
| 称号 | 棋士名 | 名人獲得期数 |
|---|---|---|
| 十四世名人 | 木村義雄 | 通算8期 |
| 十五世名人 | 大山康晴 | 通算18期 |
| 十六世名人 | 中原誠 | 通算15期 |
| 十七世名人 | 谷川浩司 | 通算5期 |
| 十八世名人 | 森内俊之 | 通算8期 |
| 十九世名人 | 羽生善治 | 通算9期 |
歴代の名人は?有名な棋士まとめ
藤井聡太
2016年に史上最年少(14歳2ヶ月)でプロ入りした藤井聡太は、2023年の第81期名人戦で渡辺明名人を4-1で破り、20歳10ヶ月で名人位を獲得しました。これは谷川浩司の21歳を更新する史上最年少名人の記録です。同時に史上初の七冠(当時のタイトル全冠制覇)も達成し、将棋界の歴史を塗り替えました。
羽生善治
引用:日本将棋連盟
羽生善治先生は1994年に初の名人位を獲得し、通算9期の名人位を誇ります。2008年に永世名人(十九世名人)の資格を得ました。タイトル獲得通算99期という前人未到の大記録を持ち、1996年には史上初の七冠独占を達成しました。
谷川浩司
引用:日本将棋連盟
1983年、当時21歳で史上最年少名人(当時)となった谷川浩司先生。通算5期の名人位を獲得し、1997年に十七世名人の資格を得ました。終盤の鋭い攻めは「光速の寄せ」と呼ばれ、多くのファンを魅了しています。
森内俊之
引用:日本将棋連盟
2002年に初めて名人位を獲得した森内俊之先生は、通算8期の名人位を誇り、2007年に十八世名人の資格を得ました。堅実な受けの棋風は「鉄板流」「鋼鉄の受け」と称されています。羽生善治先生との名人戦は数多くの名勝負を生みました。
中原誠
引用:日本将棋連盟
1972年に大山康晴先生を破って名人位を獲得した中原誠先生は、通算15期という名人位の歴代2位の記録を持ちます。デビューから4年連続で順位戦を昇級し最速でA級入りを果たしました。1976年に十六世名人の資格を獲得しています。
大山康晴
引用:日本将棋連盟
大山康晴先生は名人位通算18期(うち13連覇)という空前絶後の大記録を持つ十五世名人です。永世十段・永世王位・永世棋聖・永世王将と合わせて5つの永世称号を保持しています。昭和の将棋界を文字通り支配した大棋士です。
木村義雄
初代実力制名人である木村義雄先生は、1937年から名人位を通算8期獲得し、十四世名人となりました。「常勝将軍」の異名を持ち、実力制名人戦の歴史はこの棋士から始まりました。
升田幸三
引用:日本将棋連盟
大山康晴先生のライバルとして活躍した升田幸三先生は、第16期・第17期の名人位を獲得しています。将棋指しを志した際に母に「名人に香車を引いて勝つ」と宣言したエピソードは有名です。実際に1956年、当時名人だった大山康晴先生に香落ちで勝利を収めています。
歴代名人一覧
実力制名人戦の第1期から現在までの歴代名人を一覧にまとめました(日本将棋連盟公式サイトより)。
| 期 | 年 | 名人 | 成績 | 対戦相手 |
|---|---|---|---|---|
| 84 | 2026 | 藤井聡太 | 進行中 | 糸谷哲郎 |
| 83 | 2025 | 藤井聡太 | 4-1 | 永瀬拓矢 |
| 82 | 2024 | 藤井聡太 | 4-1 | 豊島将之 |
| 81 | 2023 | 藤井聡太 | 4-1 | 渡辺明 |
| 80 | 2022 | 渡辺明 | 4-1 | 斎藤慎太郎 |
| 79 | 2021 | 渡辺明 | 4-1 | 斎藤慎太郎 |
| 78 | 2020 | 渡辺明 | 4-2 | 豊島将之 |
| 77 | 2019 | 豊島将之 | 4-0 | 佐藤天彦 |
| 76 | 2018 | 佐藤天彦 | 4-2 | 羽生善治 |
| 75 | 2017 | 佐藤天彦 | 4-2 | 稲葉陽 |
| 74 | 2016 | 佐藤天彦 | 4-1 | 羽生善治 |
| 73 | 2015 | 羽生善治 | 4-1 | 行方尚史 |
| 72 | 2014 | 羽生善治 | 4-0 | 森内俊之 |
| 71 | 2013 | 森内俊之 | 4-1 | 羽生善治 |
| 70 | 2012 | 森内俊之 | 4-2 | 羽生善治 |
| 69 | 2011 | 森内俊之 | 4-3 | 羽生善治 |
| 68 | 2010 | 羽生善治 | 4-0 | 三浦弘行 |
| 67 | 2009 | 羽生善治 | 4-3 | 郷田真隆 |
| 66 | 2008 | 羽生善治 | 4-2 | 森内俊之 |
| 65 | 2007 | 森内俊之 | 4-3 | 郷田真隆 |
| 64 | 2006 | 森内俊之 | 4-2 | 谷川浩司 |
| 63 | 2005 | 森内俊之 | 4-3 | 羽生善治 |
| 62 | 2004 | 森内俊之 | 4-2 | 羽生善治 |
| 61 | 2003 | 羽生善治 | 4-0 | 森内俊之 |
| 60 | 2002 | 森内俊之 | 4-0 | 丸山忠久 |
| 59 | 2001 | 丸山忠久 | 4-3 | 谷川浩司 |
| 58 | 2000 | 丸山忠久 | 4-3 | 佐藤康光 |
| 57 | 1999 | 佐藤康光 | 4-3 | 谷川浩司 |
| 56 | 1998 | 佐藤康光 | 4-3 | 谷川浩司 |
| 55 | 1997 | 谷川浩司 | 4-2 | 羽生善治 |
| 54 | 1996 | 羽生善治 | 4-1 | 森内俊之 |
| 53 | 1995 | 羽生善治 | 4-1 | 森下卓 |
| 52 | 1994 | 羽生善治 | 4-2 | 米長邦雄 |
| 51 | 1993 | 米長邦雄 | 4-0 | 中原誠 |
| 50 | 1992 | 中原誠 | 4-3 | 高橋道雄 |
| 49 | 1991 | 中原誠 | 4-1 | 米長邦雄 |
| 48 | 1990 | 中原誠 | 4-2 | 谷川浩司 |
| 47 | 1989 | 谷川浩司 | 4-0 | 米長邦雄 |
| 46 | 1988 | 谷川浩司 | 4-2 | 中原誠 |
| 45 | 1987 | 中原誠 | 4-2 | 米長邦雄 |
| 44 | 1986 | 中原誠 | 4-1 | 大山康晴 |
| 43 | 1985 | 中原誠 | 4-2 | 谷川浩司 |
| 42 | 1984 | 谷川浩司 | 4-1 | 森安秀光 |
| 41 | 1983 | 谷川浩司 | 4-2 | 加藤一二三 |
| 40 | 1982 | 加藤一二三 | 4-3 | 中原誠 |
| 39 | 1981 | 中原誠 | 4-1 | 桐山清澄 |
| 38 | 1980 | 中原誠 | 4-1 | 米長邦雄 |
| 37 | 1979 | 中原誠 | 4-2 | 米長邦雄 |
| 36 | 1978 | 中原誠 | 4-2 | 森けい二 |
| 35 | 1976 | 中原誠 | 4-3 | 米長邦雄 |
| 34 | 1975 | 中原誠 | 4-3 | 大内延介 |
| 33 | 1974 | 中原誠 | 4-3 | 大山康晴 |
| 32 | 1973 | 中原誠 | 4-0 | 加藤一二三 |
| 31 | 1972 | 中原誠 | 4-3 | 大山康晴 |
| 30 | 1971 | 大山康晴 | 4-3 | 升田幸三 |
| 29 | 1970 | 大山康晴 | 4-1 | 灘蓮照 |
| 28 | 1969 | 大山康晴 | 4-3 | 有吉道夫 |
| 27 | 1968 | 大山康晴 | 4-0 | 升田幸三 |
| 26 | 1967 | 大山康晴 | 4-1 | 二上達也 |
| 25 | 1966 | 大山康晴 | 4-2 | 升田幸三 |
| 24 | 1965 | 大山康晴 | 4-1 | 山田道美 |
| 23 | 1964 | 大山康晴 | 4-2 | 二上達也 |
| 22 | 1963 | 大山康晴 | 4-1 | 升田幸三 |
| 21 | 1962 | 大山康晴 | 4-0 | 二上達也 |
| 20 | 1961 | 大山康晴 | 4-1 | 丸田祐三 |
| 19 | 1960 | 大山康晴 | 4-1 | 加藤一二三 |
| 18 | 1959 | 大山康晴 | 4-1 | 升田幸三 |
| 17 | 1958 | 升田幸三 | 4-2 | 大山康晴 |
| 16 | 1957 | 升田幸三 | 4-2 | 大山康晴 |
| 15 | 1956 | 大山康晴 | 4-0 | 花村元司 |
| 14 | 1955 | 大山康晴 | 4-2 | 高島一岐代 |
| 13 | 1954 | 大山康晴 | 4-1 | 升田幸三 |
| 12 | 1953 | 大山康晴 | 4-1 | 升田幸三 |
| 11 | 1952 | 大山康晴 | 4-1 | 木村義雄 |
| 10 | 1951 | 木村義雄 | 4-2 | 升田幸三 |
| 9 | 1950 | 木村義雄 | 4-2 | 大山康晴 |
| 8 | 1949 | 木村義雄 | 3-2 | 塚田正夫 |
| 7 | 1948 | 塚田正夫 | 4-2 | 大山康晴 |
| 6 | 1947 | 塚田正夫 | 4-2 | 木村義雄 |
| 3 | 1942 | 木村義雄 | 4-0 | 神田辰之助 |
| 2 | 1940 | 木村義雄 | 4-1 | 土居市太郎 |
| 1 | 1935-37 | 木村義雄 | - | - |
※第4期・第5期は戦時中の記録により詳細不明の部分があります。第84期は2026年4月時点で進行中です。
名人戦の基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 名人戦・順位戦 |
| 主催 | 朝日新聞社・毎日新聞社 |
| 特別協賛 | 大和証券グループ |
| 創設 | 1935年(実力制名人戦) |
| 現名人(2026年4月) | 藤井聡太(第81期〜) |
| 七番勝負の時期 | 例年4月〜7月 |
| 七番勝負の持ち時間 | 各9時間(2日制) |
| 順位戦の持ち時間 | 各6時間 |
| クラス | A級・B級1組・B級2組・C級1組・C級2組 |
| 挑戦資格 | A級優勝者(最高成績者) |
| 永世名人の条件 | 通算5期保持 |
| 歴代永世名人 | 木村義雄・大山康晴・中原誠・谷川浩司・森内俊之・羽生善治 |















僕の名は?
失礼いたしました。
漏れのあった個所の加筆させていただきました。