この記事では、プロ棋士の順位戦について、5つのクラスの仕組みや昇降級のルール、最新のA級棋士一覧などを初心者にもわかりやすく解説します。
目次
順位戦とは?
名人戦の予選となるリーグ戦
順位戦とは、プロ棋士を実力に応じて5つのクラスに分けて行うリーグ戦です。名人を除くすべてのプロ棋士が参加し、1年かけてクラス内で対局を行います。順位戦の最上位クラスであるA級で最高成績を収めた棋士が、名人への挑戦権を獲得できます。
フリークラスを除いた棋士をA級からC級2組の5つの組に分けてリーグ戦を行います。
主催は朝日新聞社と毎日新聞社で、大和証券グループが特別協賛しています。
5つのクラスでプロ棋士を格付け
順位戦には下から順にC級2組、C級1組、B級2組、B級1組、A級の5つのクラスがあります。A級が最上位のクラスで、名人に次ぐ実力者が集まっています。
新しくプロ棋士(四段)になった棋士はC級2組からスタートします。毎年のリーグ戦で好成績を収めれば上のクラスに昇級できますが、飛び級はできません。つまりC級2組からA級にたどり着くには最短でも4年かかります。
A級1位が名人への挑戦者に
A級で最高成績を収めた棋士が、その年の名人戦七番勝負への挑戦権を獲得します。最高成績者が複数いる場合はプレーオフが行われます。
A級についてはA級優勝者が、例年4月から7月にかけて七番勝負を行います。最高成績者が複数出た場合はプレーオフとなります。プレーオフが3人以上の場合はパラマス方式で挑戦者を決定します。
なお名人は順位戦には参加しません。名人戦七番勝負で防衛に失敗した場合、翌年はA級からの再スタートとなります。
順位戦の仕組み
各クラスの人数と昇降級条件
順位戦の各クラスの人数や昇降級の条件は以下の通りです(第84期の情報をもとにまとめています)。

| クラス | 人数 | 対局数 | 昇級枠 | 降級条件 |
|---|---|---|---|---|
| A級 | 10名 | 総当たり9局 | 1位→名人挑戦 | 下位2名がB級1組へ降級 |
| B級1組 | 13名 | 総当たり | 上位2名がA級へ | 下位3名がB級2組へ降級 |
| B級2組 | 約25名 | 10局 | 上位3名がB級1組へ | 降級点2回で降級 |
| C級1組 | 約30名 | 10局 | 上位3名がB級2組へ | 降級点2回で降級 |
| C級2組 | 約55名 | 10局 | 上位3名がC級1組へ | 降級点3回でフリークラスへ |
全体の流れを図にまとめると、以下のようになります。

A級・B級1組は総当たり戦
A級は10名で総当たり(各9局)、B級1組は13名で総当たり戦を行います。上位クラスでは全員と対局するため、まぐれで昇級することが難しく、真の実力が問われます。
B級2組以下は抽選で対戦相手が決定
B級2組・C級1組・C級2組では、人数が多いため抽選で対戦相手を決め、1人あたり10局を指します。
持時間は全て各6時間です。
降級点システム
B級2組以下のクラスでは、成績が悪くてもすぐに降級するわけではありません。代わりに「降級点」という制度が導入されています。
クラス内で成績下位の一定割合の棋士に降級点が1点加算され、降級点が規定の点数に達すると下のクラスに降級します。
| クラス | 降級点が付く割合 | 降級までの点数 |
|---|---|---|
| B級2組 | 4人に1名の割合 | 2点で降級 |
| C級1組 | 4.5人に1名の割合 | 2点で降級 |
| C級2組 | 4.5人に1名の割合 | 3点でフリークラスへ |
降級点はB級2組のリーグ参加者の4人につき1名の割合(中略)降級点2つでC級1組降級(中略)C級2組のリーグ参加者の4.5名に付き1名の割合(中略)降級点3つでフリークラス降級
A級棋士とは?
プロ棋士トップ約7%の超一流棋士
A級に在籍する棋士はわずか10名です。名人を含めると11名で、プロ棋士約170名のうち上位約7%にあたります。A級に在籍していること自体が、プロ棋士の中でもトップクラスの実力を持つ証です。
最新のA級棋士一覧(第84期・2025〜2026年)
日本将棋連盟の公式サイトによると、第84期A級順位戦の参加棋士は以下の10名です。
| 順位 | 棋士名 | 成績 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | 永瀬拓矢九段 | 7勝2敗 | |
| 2 | 佐藤天彦九段 | 3勝6敗 | |
| 3 | 渡辺明九段 | 1勝8敗 | 降級 |
| 4 | 佐々木勇気八段 | 4勝5敗 | |
| 5 | 増田康宏八段 | 5勝4敗 | |
| 6 | 豊島将之九段 | 6勝3敗 | |
| 7 | 中村太地八段 | 2勝7敗 | 降級 |
| 8 | 千田翔太八段 | 4勝5敗 | |
| 9 | 近藤誠也八段 | 6勝3敗 | |
| 10 | 糸谷哲郎八段 | 7勝2敗 | 名人挑戦 |
第84期では、糸谷哲郎八段と永瀬拓矢九段がともに7勝2敗の最高成績で並び、プレーオフの結果糸谷哲郎八段が名人挑戦権を獲得しました。2026年4月から藤井聡太名人との七番勝負が進行中です。
藤井聡太の最年少A級昇級
現名人の藤井聡太は、2018年にC級2組でプロデビューした後、C級1組・B級2組・B級1組と4期連続昇級を果たし、2022年にA級に到達しました。A級昇級時の年齢は19歳で、加藤一二三九段の記録(18歳)に次ぐ歴代2番目の若さでのA級入りとなりました。
その翌年の第81期名人戦(2023年)では、A級1期目にして名人挑戦を決め、渡辺明名人を破って20歳で名人を獲得しています。
順位戦のルール
持ち時間は各6時間
順位戦は全クラス共通で持ち時間は各6時間です。これは将棋の公式戦の中でも長い部類に入り、1局が深夜まで続くことも珍しくありません。
持時間は全て各6時間です。
チェスクロック使用・切れたら1手60秒未満
順位戦ではチェスクロック(対局時計)が使用されます。持ち時間を使い切った場合は、1手60秒未満で指さなければなりません。
A級の最終局は一斉対局
A級の最終戦とその前の対局は、全対局が同日に一斉に行われます。名人挑戦や降級が最終盤まで確定しないことが多く、将棋ファンの間では「A級順位戦最終日」は一年で最も盛り上がる日の一つとして知られています。
A級の最終戦と前戦は同時開催
順位戦の見どころ
昇級争い
各クラスの昇級枠は限られているため、昇級争いは熾烈を極めます。特にB級1組からA級への昇級枠はわずか2名で、B級1組に在籍する棋士の多くがA級昇級を目指して激しい戦いを繰り広げます。
第84期では広瀬章人九段が11勝1敗という圧倒的な成績でB級1組からA級への昇級を果たしました。
降級点とフリークラス
B級2組以下では降級点制度があるため、毎年「降級点を取るかどうか」のギリギリの戦いも見どころです。特にC級2組で降級点が3つたまるとフリークラスに降級してしまいます。
フリークラスとは順位戦に参加しない棋士のクラスです。C級2組からの降級のほか、自ら宣言してフリークラスに移行する棋士もいます。
フリークラスの棋士が順位戦に復帰するには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。年間「参加棋戦数+8」勝以上かつ勝率60%以上、30局以上で勝率65%以上、全棋士参加棋戦優勝またはタイトル挑戦など。
A級棋士の昇級・降級ドラマ
A級では毎年下位2名が降級します。かつてA級に君臨していたトップ棋士が降級するのは、将棋界の世代交代を象徴する出来事として大きな注目を集めます。
第84期では渡辺明九段(元名人)と中村太地八段がA級から降級しました。一方で、B級1組からは広瀬章人九段や斎藤慎太郎八段が昇級し、A級の顔ぶれは毎年少しずつ変わっていきます。
順位戦の基本情報まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | 名人戦・順位戦 |
| 主催 | 朝日新聞社・毎日新聞社 |
| 特別協賛 | 大和証券グループ |
| クラス数 | 5クラス(A級〜C級2組)+フリークラス |
| 持ち時間 | 各6時間(チェスクロック使用) |
| 開催時期 | 毎年6月〜翌年3月 |
| A級人数 | 10名(総当たり9局) |
| 名人挑戦 | A級最高成績者が七番勝負で名人に挑戦 |
| 現名人 | 藤井聡太(2026年4月時点) |
| 永世称号 | 永世名人(名人通算5期) |
永世名人は名人を通算5期保持した棋士に与えられる称号です。
まとめ
- 順位戦はプロ棋士を5つのクラスに分けて行うリーグ戦で、名人戦の予選も兼ねている
- A級〜C級2組の5クラスがあり、A級のトップが名人への挑戦権を得る
- 新四段はC級2組からスタートし、A級到達には最短4年かかる
- B級2組以下では降級点制度が採用されている
- 持ち時間は全クラス各6時間で、将棋界屈指の長い持ち時間
- A級に在籍する10名はプロ棋士トップ約7%の超一流棋士










