今回は、プロの将棋の中でも最も大きなタイトル戦の一つ、竜王戦について解説していきます。これを読めばプロの将棋の観戦がもっと楽しくなりますよ。
竜王戦とは? — 将棋界の最高峰タイトル
現在の竜王は藤井聡太(2026年4月時点)
2026年4月現在、竜王のタイトルを保持しているのは藤井聡太竜王です。日本将棋連盟の公式サイトによると、藤井聡太竜王は第34期(2021年)から第38期(2025年)まで5期連続で竜王位を保持しています。
名人戦に並ぶ2大タイトルの一つ
竜王戦は、1987年に創設されたタイトル戦です。前身となる「十段戦」(1962年〜)、さらにその前身の「九段戦」(1950年〜)を含めると、名人戦に次いで2番目に歴史のあるタイトル戦です。
主催は読売新聞社で、全国紙がバックアップする大規模なタイトル戦となっています(出典)。
優勝賞金4,400万円!将棋界最高額
竜王戦の賞金額について、日本将棋連盟の公式規定には以下のように記載されています。
賞金 七番勝負の勝者 4,400万円で、将棋界最高です。
七番勝負の敗者 1,650万円
各クラスの優勝賞金を図にすると、竜王戦のスケールの大きさがわかります。

名人戦と合わせて「2大タイトル」と呼ばれ、竜王と名人はプロ棋士の中でも最も格の高いタイトルとされています。
新人やアマチュアでも挑戦できる「竜王戦ドリーム」
日本将棋連盟の公式サイトによると、竜王戦は「全棋士と女流棋士4名・奨励会員1名・アマチュア4名で行われ」ます。
これは名人戦と大きく違うポイントです。名人への挑戦権を得るためには何年もかけて順位戦を勝ち上がり、最高クラスのA級で最優秀成績をおさめる必要があります。一方、竜王戦は新人棋士にもタイトルと賞金の獲得チャンスがあることから、「竜王戦ドリーム」という言葉も生まれました。
竜王戦の仕組みって?
計6クラスの予選を勝ち抜いた棋士で挑戦者決定トーナメント
竜王戦の全体の流れを図にまとめると、以下のようになります。

全棋士と女流棋士4名・奨励会員1名・アマチュア4名で行われます。1組から6組に分けてトーナメント戦を行い、各組の上位者の計11名で挑戦者決定トーナメントを行い、挑戦者を決めます。例年10月から12月にかけて竜王と挑戦者が七番勝負を行います。
出典:日本将棋連盟「竜王戦」
予選で優秀な成績を修めれば、挑戦者決定トーナメントでの対局数が少なくなる有利な位置からスタートできます。
竜王戦 挑戦者決定トーナメント
竜王ランキング戦の各クラス
竜王戦の予選は「竜王ランキング戦」と呼ばれています。各クラスの概要は以下の通りです。
| クラス | 定員 | 本選出場 | 昇級条件 | 降級条件 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1組 | 16人 | 5人 | - | 下位4人 | - |
| 2組 | 16人 | 2人 | 上位4人 | 下位4人 | - |
| 3組 | 16人 | 1人 | 上位4人 | 下位4人 | - |
| 4組 | 32人 | 1人 | 上位4人 | 下位4人 | - |
| 5組 | 32人 | 1人 | 上位4人 | 下位4人 | - |
| 6組 | 定員なし | 1人 | 上位4人 | - | 女流枠4名・アマ枠5名・奨励会枠1名(出典) |
※6組のアマチュア招待枠は第34期から4名に変更されています(出典)。
永世竜王になるには?
永世竜王の条件について、日本将棋連盟の公式サイトには以下のように定められています。
永世竜王 連続5期もしくは通算7期保持
永世竜王の資格を持つのは以下の3人です。
- 渡辺明九段 — 通算11期(第17-25期の9連覇を含む)
- 羽生善治九段 — 通算7期
- 藤井聡太竜王 — 5期連続(第34-38期)
竜王戦のルール
竜王と挑戦者の七番勝負
挑戦者決定トーナメントを勝ち抜いた棋士には、竜王位への挑戦権が与えられます。七番勝負で先に4勝したほうが竜王のタイトルを獲得します。
持ち時間は8時間!2日にわたる対局
竜王戦七番勝負の持ち時間は各8時間で、1局を2日かけて行います。1日目の終わりには封じ手を行います。
封じ手とは、1日目の最後の1手を実際には指さずに、紙に指し手を書いて封筒に入れ記録係に渡すシステムです。これにより、1日目と2日目の間に手番の対局者が次の手を考えて有利になることを防いでいます。
なお、各段階の持ち時間は以下の通りです。
持時間は各5時間です。ただし、残留決定戦のみは各3時間(チェスクロック使用)
出典:日本将棋連盟「竜王戦のしくみ」(※ランキング戦の持ち時間。七番勝負は各8時間)
歴代の竜王は?有名な棋士まとめ
藤井聡太 — 史上最年少竜王、5連覇で永世竜王
藤井聡太は2021年(第34期)、19歳で豊島将之竜王を4勝0敗で破り、史上最年少で竜王位を獲得しました。その後、広瀬章人八段(第35期)、伊藤匠七段(第36期)、佐々木勇気八段(第37期・第38期)の挑戦を退け、竜王5連覇を達成しています(出典)。
藤井聡太は竜王だけでなく、2023年に王座を獲得して史上初の八冠独占を達成したことでも知られています。将棋界の歴史を塗り替え続けている、現代を代表する棋士です。
渡辺明 — 初代永世竜王、前人未到の9連覇
引用:日本将棋連盟
渡辺明は竜王戦の歴史を語る上で欠かせない棋士です。2004年(第17期)、20歳で竜王を獲得し、そこから前人未到の9連覇(第17期〜第25期)を達成。通算11期の竜王位を獲得し、初代永世竜王の称号を手にしました(出典)。
羽生善治 — 永世七冠のレジェンド
引用:日本将棋連盟
羽生善治は通算タイトル99期という前人未到の記録を持つ、将棋界のレジェンドです。初めて獲得したタイトルは実は竜王で、1989年(第2期)に19歳で竜王位を手にしました。2017年(第30期)には渡辺明竜王を破って通算7期目の竜王位を獲得し、永世竜王の資格を達成。同時に「永世七冠」という史上初の偉業を成し遂げました(出典)。
藤井猛 — 藤井システムで竜王戦ドリームを体現
引用:日本将棋連盟
藤井猛は「藤井システム」というオリジナルの戦法を発明したことで有名な棋士です。1998年(第11期)に竜王位を獲得し、3連覇を達成しました(出典)。下位クラスからタイトルを獲得した姿は、竜王戦ドリームの代表的なエピソードの一つです。
歴代竜王一覧
竜王戦(1988年〜)の歴代竜王を一覧にまとめます。(日本将棋連盟 竜王戦ページより)
| 期 | 年度 | 竜王 | スコア | 対戦相手 |
|---|---|---|---|---|
| 第1期 | 1988 | 島朗 | 4-0 | 米長邦雄 |
| 第2期 | 1989 | 羽生善治 | 4-3 | 島朗 |
| 第3期 | 1990 | 谷川浩司 | 4-1 | 羽生善治 |
| 第4期 | 1991 | 谷川浩司 | 4-2 | 森下卓 |
| 第5期 | 1992 | 羽生善治 | 4-3 | 谷川浩司 |
| 第6期 | 1993 | 佐藤康光 | 4-2 | 羽生善治 |
| 第7期 | 1994 | 羽生善治 | 4-2 | 佐藤康光 |
| 第8期 | 1995 | 羽生善治 | 4-2 | 佐藤康光 |
| 第9期 | 1996 | 谷川浩司 | 4-1 | 羽生善治 |
| 第10期 | 1997 | 谷川浩司 | 4-0 | 真田圭一 |
| 第11期 | 1998 | 藤井猛 | 4-0 | 谷川浩司 |
| 第12期 | 1999 | 藤井猛 | 4-1 | 鈴木大介 |
| 第13期 | 2000 | 藤井猛 | 4-3 | 羽生善治 |
| 第14期 | 2001 | 羽生善治 | 4-1 | 藤井猛 |
| 第15期 | 2002 | 羽生善治 | 4-3 | 阿部隆 |
| 第16期 | 2003 | 森内俊之 | 4-0 | 羽生善治 |
| 第17期 | 2004 | 渡辺明 | 4-3 | 森内俊之 |
| 第18期 | 2005 | 渡辺明 | 4-1 | 木村一基 |
| 第19期 | 2006 | 渡辺明 | 4-3 | 佐藤康光 |
| 第20期 | 2007 | 渡辺明 | 4-2 | 佐藤康光 |
| 第21期 | 2008 | 渡辺明 | 4-3 | 羽生善治 |
| 第22期 | 2009 | 渡辺明 | 4-0 | 森内俊之 |
| 第23期 | 2010 | 渡辺明 | 4-2 | 羽生善治 |
| 第24期 | 2011 | 渡辺明 | 4-1 | 丸山忠久 |
| 第25期 | 2012 | 渡辺明 | 4-0 | 丸山忠久 |
| 第26期 | 2013 | 森内俊之 | 4-1 | 渡辺明 |
| 第27期 | 2014 | 糸谷哲郎 | 4-1 | 森内俊之 |
| 第28期 | 2015 | 渡辺明 | 4-1 | 糸谷哲郎 |
| 第29期 | 2016 | 渡辺明 | 4-3 | 丸山忠久 |
| 第30期 | 2017 | 羽生善治 | 4-1 | 渡辺明 |
| 第31期 | 2018 | 広瀬章人 | 4-3 | 羽生善治 |
| 第32期 | 2019 | 豊島将之 | 4-1 | 広瀬章人 |
| 第33期 | 2020 | 豊島将之 | 4-1 | 羽生善治 |
| 第34期 | 2021 | 藤井聡太 | 4-0 | 豊島将之 |
| 第35期 | 2022 | 藤井聡太 | 4-2 | 広瀬章人 |
| 第36期 | 2023 | 藤井聡太 | 4-0 | 伊藤匠 |
| 第37期 | 2024 | 藤井聡太 | 4-2 | 佐々木勇気 |
| 第38期 | 2025 | 藤井聡太 | 4-0 | 佐々木勇気 |
竜王戦の基本情報まとめ
| 正式名称 | 竜王戦 |
|---|---|
| 主催 | 読売新聞社(出典) |
| 特別協賛 | 野村ホールディングス株式会社(出典) |
| 創設 | 1987年(前身の九段戦は1950年〜) |
| 優勝賞金 | 4,400万円(出典) |
| 番勝負 | 七番勝負(先に4勝で獲得) |
| 持ち時間 | 各8時間・2日制(出典) |
| 開催時期 | 例年10月〜12月(出典) |
| 永世称号 | 永世竜王(連続5期もしくは通算7期保持 / 出典) |
| 永世称号保持者 | 渡辺明・羽生善治・藤井聡太 |










はじめまして。
タイトル戦の仕組みなどに興味を持ち始めました。
竜王戦の特に1組のランキング戦(トーナメント)があまりにも不可解で、ご質問させてください。
1組ランキングトーナメントで「ベスト4」まで勝ち上がっても、三位決定戦に負けたら、四位にもならない、ましてや五位にすら入れないってことですよね?
トーナメントでベスト4なのに!です。
どうしてこんなに不可解で不明瞭な方式が採用されたのですか?
ベスト4で一度敗戦し、三位決定戦でも敗戦しているから、「負け数」が実際に本戦に出られる「四位」「五位」よりも多い、ということは認識できます。
ですが、トーナメントで「ベスト4」にいるのに、五位以下の扱いを受ける仕組みが不可解です。