アマチュアに人気の戦法といえばやっぱり四間飛車ですよね。オンラインで対局していても四間飛車使いはかなりの割合で遭遇します。今回はそんな四間飛車の中でも一風変わった立石流四間飛車という戦法を紹介したいと思います。
立石流は、通常のノーマル四間飛車とは違い、ガンガン攻めていける戦法です。とくに居飛車穴熊や左美濃といった持久戦相手に強さを発揮するので、これらの対振り持久戦の作戦に困っているというかたはぜひ試してみてください。
目次
立石流四間飛車とは?
立石流四間飛車とは、アマチュアの強豪である立石勝己さんによって考案された戦法で、その後プロの将棋でも指されるようになります。
最初はノーマル四間飛車と同じような駒組みが進みますが、早くに角道を開けて角交換を迫るのが最大の特徴です。
現在では対策が進みプロでは指されなくなりましたが、アマチュア間では十分通用する戦法です。
ちなみに角交換を迫る四間飛車ですが、一般的な角交換四間飛車とは異なる戦法となります。角交換四間飛車について学びたい人は以下の記事をご覧ください。
基本の駒組みは角交換を迫る
最初はノーマル四間飛車と同じ
以下のような基本図から考えていきましょう。
立石流四間飛車の出だしは、ノーマル四間飛車と同じように角道を止めて駒組みを進めます。このとき、▲7七角と▲7八銀を後回しにしているのが立石流の特徴です。なお居飛車側が対振り急戦の作戦を取ってきたときは、▲7七角や▲7八銀は省略できません。居飛車側が急戦の構えをとってきたときは立石流には組まずにノーマル四間飛車として駒組みをするのが賢明です。
図1-1は先手が端歩を突いたところで、これは後手に対して対振り急戦か対振り持久戦か聞いている手になります。後手が端歩を受けてこなかった場合は持久戦である可能性が高いでしょう。
角交換を迫る
図1-1から △5三銀 ▲6五歩 として図1-2。
後手が端歩を受けないところを見て、いきなり角交換を迫るのが立石流四間飛車です。普通の四間飛車では考えられないような手なので、初めて見る方はびっくりするかもしれません。
7筋の歩を突く手を最優先に
図1-2から △8五歩 ▲7五歩 として図1-3。
後手が飛車先の歩を伸ばしてきたにもかかわらず、飛車先を受けずに▲7五歩と突きます。立石流は四間飛車から石田流に組み替える戦法なので、この7五歩はとにかく最優先で突くようにしましょう。逆に相手が先に△7四歩と突いている場合には立石流の駒組みはできません。
なお角交換を迫る前に▲7五歩と突いてしまう手も成り立つので、そちらの順序は好みになります。
図1-3から △8六歩 ▲同歩 △同飛 ▲7八金 として図1-4。
飛車先の歩を交換されても▲7八金と上がっておけば飛車先を突破される心配はありません。
角を交換して捌く
図1-4から △8二飛 ▲2二角成 として図1-5。
後手の飛車が引いたところで角交換をします。
石田流に組み替える
浮き飛車に構える
図1-5から △2二玉 ▲8八銀 1二香 ▲6六飛 として図2-1。
立石流はここから石田流への組み換えを狙います。そのためまずは▲6六飛と浮き飛車に構えます。
補足:相手の自陣角に注意
飛車を浮くタイミングは、角打ちのスキができないように注意しましょう。例えば図a-1のように、▲8八銀を省略して飛車を浮いたとします。
このとき△3三角と打たれてしまうと飛車にあたる上、逃げても香車を取られてしまいます。
8筋に歩を打たせる
図2-1から △1一玉 ▲8七歩 △2二銀 ▲8四飛として 図2-2。
8筋に飛車を回り飛車交換を迫ります。先手は後手に比べて飛車の打ち込みに強い駒組みをしています。基本的に単純な飛車交換となれば立石流が有利になると覚えておきましょう。
石田流の駒組みへ
図2-2から △8五歩 ▲7六飛 として図2-3。
後手は飛車交換をするわけにはいかないので△8五歩と打ちましたが、これによって後手は歩切れになった上に、飛車の働きが悪くなり、先手が大きく得をしました。
ここで先手は7六飛と回り、石田流の駒組みをしていきます。
桂馬を活用する
図2-3から △3一金 ▲7七銀 △4二金 ▲6八銀 △9四歩 ▲7七桂 として図2-4。
ここからは穏やかな駒組みが進んでいきます。後手は穴熊を固め、先手は桂馬を跳ねて活用を図っていきます。
銀を中央に寄せて美濃囲いを固める
図2-4から △4四銀 ▲6七銀 △3五歩 ▲5八銀 として図2-5。
銀をジグザグに動かして、美濃囲いにくっつけます。立石流の囲いはこれで完成です。
補足:角交換を拒否されたら
相手に角道をふさがれ、角交換を拒否された場合について補足します。そのような場合は、▲7八金と上がってバランスを整え石田流に組み替えた後、角を6六に上がっておきます。
後手の角が働いていないのに対し、先手の角は好位置にあるのがわかります。
立石流の仕掛けと攻め筋、飛車交換を狙う
ここまで立石流四間飛車での駒組みについて解説してきました。ここからは、立石流のさまざまな仕掛けと攻め筋を見ていきます。
前にも解説した通り、立石流と居飛車側が飛車交換になると、基本的には立石流が有利となります。そのため立石流の仕掛けは基本的に飛車交換を狙うものとなります。
飛車をぶつけて交換を迫る
まず一つ目の仕掛けを見ていきます。図3-1のように、居飛車側が飛車筋の歩を交換している場合を考えていきましょう。
図3-1から ▲8六飛 △8五歩 として図3-2。
飛車をぶつけて交換を迫る手筋です。後手はこのまま飛車交換をするわけにはいかないので△8五歩と打たせます。基本的に先手は損をしない変化なので、狙えるときは常に狙いましょう。
桂馬を跳ねながら捌く手順
今度は別の仕掛けを見ていきます。居飛車側は飛車先の歩を切っていません。
図3-3から ▲7四歩 △同歩 ▲同飛 △7三歩 ▲7五飛 として図3-4。
7筋の歩を交換した後、飛車を五段目にさげるのがポイントです。次に▲8五飛、△同飛、▲同桂の変化が避けられません。
自陣角の打ち込みから捌きを狙う
では最後に、図3-6からの仕掛けを見ていきます。今度は居飛車側が飛車を浮いていて、7筋の交換を防いでいます。
図3-6から ▲5七角 として図3-7。
自陣に角を打ちます。この角は間接的に相手の飛車を睨んでいて、次の7四歩が飛車に当たるようにしています。
図3-7から △8二飛 ▲7四歩 △同歩 ▲同飛 △7三歩 ▲8四飛 として図3-8。
後手は▲7四歩が飛車にあたるのを嫌い、△8二飛と逃げました。そこで7筋の歩を交換し、▲8四飛と回れば飛車交換が避けられない形になります。
まとめ
いかがでしたか?今回は立石流の駒組みと様々な仕掛けを見てきました。四間飛車党の方は戦法のレパートリーに入れておくと、作戦の幅が大きく広がると思います。
また立石流についてさらに勉強したいという方は、小林健二先生の「振り飛車奇襲戦法」を一読されることを勧めます。小林健二先生は、立石流に自信の研究を加えて「スーパー立石流」と称した戦法を得意にしていた時期があり、参考になる手筋も多く載っていますよ。