相振り飛車は指し手が非常に豊富で、定跡が無いとされています。そのため相振り飛車の駒組みでは、うまく相手の囲いを崩せる形に持っていく構想力の勝負となります。相手がどんな指し手でも囲い崩しの形にもっていけるよう、できるだけ多くの崩しのパターンを知っておくことが勝利への近道です。
今回は金無双崩しの基本的な手筋を3つ紹介しますので、がんばって覚えていきましょう。
向かい飛車&6六角型での崩し方
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【図1-1 6六角からの金無双崩し】
まず1つ目の手筋は、向かい飛車に構えていて、角が6六の位置にあるときに使える手筋です。2枚の持ち歩と7七の桂馬もポイントとなります。
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【図1-2 端から手を付ける】
まずは端の突き捨てから▲9三歩と打ちます。後手はこの9三の歩を取らなければ、次に▲9五香とされて端を突破されてしまいます。ただし△9三桂としてしまうと▲9四歩で桂馬が死んでしまうので、△9三銀か△9三香として歩を取りたいところです。
銀で取った場合
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【図1-3 銀で取ってきた場合】
まずは銀で取ってきた場合について考えます。次の手は知らないとさせないかもしれません。
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【図1-4 角を切って銀をぶち込む】
角を切ってしまい△同香と取らせます。なおこのとき△同桂なら8四歩で桂馬がとれます。香車を吊り上げたら▲9二銀が狙いの一手で、次に▲8一銀、△同玉、▲8三飛成となれば金無双が崩壊します。
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【図1-5 後手は仕方なく角で受ける】
後手は仕方なく8四角と受けますが、桂馬を跳ねて攻め駒を足します。
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【図1-6 金無双を突破】
△9四香と香車が逃げたところで▲8一銀と桂馬を取りに行きます。そこからは▲9三桂成と桂馬を成ってじわじわ攻めていけば優勢です。
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【図1-4(再掲) 角を切って銀をぶち込む】
▲9三歩に対して△同銀と取ってきた場合は、すぐに▲9三角成と角を切ってしまうのがポイントでした。そのあとは図1-4のように銀を打ち込んで▲8一銀を狙います。
香車で取った場合
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【図1-7 香車で取ってきた場合】
ここからは 図1-2 に戻り、▲9三歩に対して△同香と取ってきた場合を考えます。
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【図1-8 香車を浮かせてさらに9三歩】
桂馬で香車狙い、浮いたところにさらに▲9三歩と打ちます。次の▲9二歩成は銀桂両取りとなるので後手は受けなければなりません。
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【図1-9 相手の銀を動かす】
後手は△9一銀と受けますが、構わず▲9二歩成とします。同銀と取った後手の銀がかなり狭くなっているのがわかりますか?
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【図1-10 銀が取れる】
端から無理やり歩を取って▲9三歩とすれば、後手の銀は助からなくなります。
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【図1-8(再掲)香車を浮かせてさらに9三歩】
▲9五歩、△同歩、▲9三歩に対して△同香と取ってきた場合は、▲8五桂から香車を狙います。さらに△9四香と浮いたところに▲9三歩と打ち、ここから銀を取りに行くのがポイントでした。
棒銀風の崩し方
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【図2-1 棒銀風の金無双崩しの基本図】
2つ目の手筋は、棒銀風に金無双を崩す手筋です。この手筋が使える条件は、上の図2-1のように向かい飛車に構えて銀が8五にいるのがポイントです。
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【図2-1' 5五角が飛車取り当たる】
また角を5五に打った時に相手の駒(今回は飛車)に当たるのもポイントで、この金無双崩しは角交換した後に頻出する手筋になります。
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【図2-2 角を打つ】
まず歩を突き捨ててから角を打ち、飛車取りに当てます。この角打ちが後手の銀も睨んでいることに注目です。
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【図2-3 角を切り、銀をとってしまう】
後手が飛車を逃がしたところで、▲8二角成として金無双の守りの銀を剥がしてしまいます。
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【図2-4 金無双を突破】
角を切った後は、棒銀のように攻めていけば囲いは崩壊してしまいます。
筋違いの角打ちから攻める
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【図3-1 筋違いの角打ちから崩す】
次は筋違いの角打ちから崩す手筋です。この手筋は角交換したときに使える手筋で、相振り飛車では頻出の角の使い方になります。
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【図3-2 露骨な角打ち】
飛車と銀だけでは攻め駒が足りないので、▲5六角と打って駒の数を足します。狙いが露骨な角打ちですが後手は適当な受けがなく、次の▲8四歩、△同歩、▲同銀からの攻めが分かっていても止められません。
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【図3-3 棒銀が決まる】
先手はここから▲8四歩、△同歩、▲同銀という攻めを狙います。図3-3の局面では、後手が8三歩と受けても駒の利きが1枚足りないため、そのまま▲8三銀成と攻められてしまいます。
玉のコビン(=ウサギの耳)を攻める
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【図4-1 コビン攻めの基本図】
最後は玉のコビン(ある駒の斜め上のマスのこと)を攻める手筋を紹介します。この手筋は石田流に組んでいて歩を3枚以上持っているときに使えます。この手筋は金無双崩しとしてもっとも有名で、様々な書籍で紹介されていますが、実戦で歩を3枚以上持てることはなかなかないため使う機会は少ないかもしれません。しかし金無双のコビンは大きな弱点であるため、応用の効きやすい手筋です。
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【図4-2 継ぎ歩と垂れ歩】
継ぎ歩と垂れ歩で6四に攻め拠点をつくります。6筋は金無双の弱点と言われています。
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【図4-3 攻めが成功】
図4-2から後手の手番をパスしていますが、後手がどのような応手をしても次に▲6五銀と進出する手が受けられません。図4-3からは次に▲6三銀と打ち込む手が非常に厳しいです。
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【図4-4 飛車も攻めに参加して好調】
後手は仕方なく△5四銀と受けますが、飛車を6筋に回って攻め駒を足していけば後手は受けきれなくなります。
まとめ
囲い崩しに至るまでの、細かな揺さぶりを知りたい方は、杉本先生の「相振り戦の絶対手筋105」という本がおすすめです。級位者にも読みやすい内容で、相振り飛車で頻出の攻めの手筋、受けの手筋を学べます。