将棋には特殊なルールとして「入玉(にゅうぎょく)」というものがあります。これは王将(玉将)を詰ますことが困難であると判断された場合に適用されます。
なおこのルールは非常に例外的で、普通に将棋を指していればほとんど起こらないため、無理に覚える必要はありません。
目次
入玉と持将棋とは??500手ルールって?
入玉とは、相手の陣地に玉が入ること
王将(玉将)が敵陣にいる状態を「入玉(にゅうぎょく)」といいます。入玉している場合、王将(玉将)が非常に詰みにくくなるため特殊な条件で勝敗が決まることがあります。
持将棋とは、入玉によって引き分けになること
入玉した際には、盤面の状況によって勝負が続行になる場合、勝者が決まる場合、引き分けになる場合があります。
特に入玉した結果として、お互いの同意のもとに引き分けになることを「持将棋(じしょうぎ)」といいます。
手数が500手になると無条件に引き分けに!
2019年10月に将棋のルール変更があり、500手に達した場合無条件に引き分けとするルールになりました。
入玉時の勝敗は、駒の得点で決まる!
将棋の駒には得点が設定されており、入玉のときは駒の点数によって勝敗の判定を行います。得点は以下のようになっており、生駒、成駒ともに同じ点数となっています。
- 王将、玉将:0点
- 飛車、角行:5点
- その他の駒:1点
入玉時の勝敗の判定は?24点法、27点法、トライルール
入玉時の勝敗の判定については、いくつかルールに種類があるためそれぞれ紹介していきます。
プロの将棋で採用!24点法
24点法は主にプロの将棋で採用されているルールです。
24点法のポイントは、お互いの同意のもとで引き分けになる「持将棋」と、有利なプレイヤーが「宣言」することによって勝負を一方的に終わらせることのできる「宣言法」があることです。
どのような状況で「持将棋」を提案できたり、「宣言」することができるのか解説していきます。
以下の条件を満たしているときに持将棋となり引き分けになります。
- お互いに入玉している
- 盤上、駒台の駒の得点の合計が、両プレイヤー共に24点以上
- お互い持将棋に同意している。
このルールは、お互いに入玉してしまい詰みがなさそうなときに適用されるルールです。持将棋にするためにはお互い同意する必要があり、どちらかが対局の続行を希望すれば持将棋は成立しません。
たとえば下の図のような局面を考えてみましょう。このときお互いに入玉しているのがわかると思います。
この局面でお互いの駒の点数を数えてみましょう。自分側の駒の点数は、下の図におけるピンクの四角で囲った駒の合計点を計算すればよいわけです。
これらの駒の点数を合計すると以下のようになります。
駒の種類 | 枚数 | 1枚当たりの点数 | 合計点 |
王将、玉将 | 1枚 | 0点 | 0点 |
飛車、角行 | 2枚 | 5点 | 10点 |
その他の駒 | 18枚 | 1点 | 18点 |
28点 |
駒の合計点は28点となりました。また同様に相手の駒の得点も計算すると26点となります。お互いに24点以上の得点があるため、同意があれば持将棋にして引き分けとすることができます。
以下の条件を満たしているとき、「宣言」することができます。このルールを「宣言法」といいます。
- 自分の手番である
- 自分の王将(玉将)が入玉している
- 自分の王将(玉将)に王手がかかっていない
- 敵陣にいる自分の駒が、王将(玉将)を除き10枚以上ある
- 敵陣にいる自分の駒と、持ち駒の得点が合計24点以上ある(敵陣以外の盤上の駒の得点は含まない)
宣言を行ったら、以下の表のように勝敗が決まります。
敵陣の駒と持ち駒の合計点が、24点以上30点以下 | 引き分け |
敵陣の駒と持ち駒の合計点が、31点以上 | 宣言した者の勝ち |
たとえば以下のような局面を考えてみます。なおこのとき自分の手番とします。
自分の王将は入玉していますが、このとき宣言法で勝つことができるか考えてみましょう。まず敵陣にある駒の数を数えてみると、10枚あり宣言の条件を満たしています。
次に得点の計算を行います。得点の計算では、下の図におけるピンクの四角で囲った駒の合計点を計算します。
駒の得点は合計で28点となります。この得点は宣言をする条件を満たしています。得点は24点以上30点以下であるため、宣言を行うと引き分けにすることができます(持将棋と異なる点は、相手の合意なしに引き分けにできるところです。もちろん宣言をせずに対局を続けて勝利を目指しても構いません)。
- 入玉した場合の特殊ルール
- お互い24点以上の場合、持将棋で引き分けに(お互い同意する必要あり)
- 片方のプレイヤーが、自陣の駒を除いて24点以上かつ、敵陣に10枚以上駒がある場合、宣言することで勝敗が決まる(お互いの同意不要)
- 宣言した場合、得点によって引き分け、もしくは宣言したプレイヤーの勝利に
将棋ウォーズで採用!27点法
27点法は、主にアマチュアの将棋で採用されているルールです。有名なオンライン対局アプリ、将棋ウォーズでも27点法が採用されています。
27点法でも、24点法と同じように持将棋と宣言のルールがあります。ただ24点法と異なり、宣言したプレイヤーは点数によらず勝利になります。
以下の条件を満たしているときに持将棋となり引き分けになります。
- お互いに入玉している
- 盤上、駒台の駒の得点の合計が、両プレイヤー共に24点以上
- お互い持将棋に同意している。
このルールは、お互いに入玉してしまい詰みがなさそうなときに適用されるルールです。持将棋にするためにはお互い同意する必要があり、どちらかが対局の続行を希望すれば持将棋は成立しません。
以下の条件を満たしているとき、宣言することができます。27点法の場合とは、宣言に必要な得点が異なっています。
- 自分の手番である
- 自分の王将(玉将)が入玉している
- 自分の王将(玉将)に王手がかかっていない
- 敵陣にいる自分の駒が、王将(玉将)を除き10枚以上ある
- 敵陣にいる自分の駒と、持ち駒の得点の合計が先手の場合は28点以上、後手の場合は27点以上ある(敵陣以外の盤上の駒の得点は含まない)
27点法では、宣言が成立した場合宣言した側が無条件に勝利となります。
先ほど24点法の説明で考えた局面を再掲します。24点法のルールが採用されている場合には、宣言することで引き分けにできましたが、27点法の場合はどうなるでしょう。
この局面では自分の駒の得点は28点であったため、24点法のルールでは宣言しても勝ちにはなりませんでした。しかし27点法のルールの場合は、宣言することで勝利することができます。
- 入玉した場合の特殊ルール
- お互い24点以上の場合、持将棋で引き分けに(お互い同意する必要あり)
- 片方のプレイヤーが、自陣の駒を除いた得点が既定の得点以上の場合、宣言することで勝利できる(既定の得点は先手28点、後手27点)
将棋クエストで採用!トライルール
将棋クエストなどの一部のオンライン対局アプリでは、トライルールという特殊な入玉のルールが採用されています。トライルールにおいては、自分の王将(玉将)が5筋の1番奥のマスに行けばその場で勝利となります。このルールは駒の得点計算などが一切不要で非常にわかりやすいという特徴があります。
たとえば、下の図のような状況となればトライルールで勝利となります。
上の図のような局面では、もしトライルールが採用されていない場合は次に詰んでしまうため、自分の対局がどのルールで行われているか注意する必要があります。